それを恋だと知ったとき。
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「ねぇスズこれしってる?ネットでバズってるんだけどさ〜」
「んー?なに」
そう言って女が見せてきたスマホの画面には"カラオケチャンプ"の文字。悠里はム、と顔をしかめた。
「俺そういうの興味ない」
「えー!本当凄いから見てよー!」
「うるさいな……見たくねぇの」
「あ……ごめん」
しゅん、と頭を垂れる女を他所に別の女が悠里の右半身にまとわりついて来た。
「あ!!スズ今日デートしてくれるんでしょ〜」
「あー、そうだったっけ?」
「もー、また忘れてたのっ!?」
鈴宮悠里はその整った容姿と派手な格好からか言い寄ってくる女が絶えなかった。正直、めちゃめちゃ鬱陶しいと思うが、自分の右半身にまとわりついた女を無理に引き剥がそうとはしない。
それこそ面倒だから。
来るもの拒まず去るもの追わない。それが悠里のスタイルなのだ。
しかし今日は何となくそんな気分にはなれなかった。
「わりぃ。また今度な」
そう言うと女は、絶対だからね!と頬を膨らませて悠里のそばを離れて行った。
「……カラオケチャンプ、か」
1人になった廊下でそう呟いた。
〜〜〜〜〜♪
「ん?」
ふと、聴こえてきた、気のせいかと耳を疑うほどの小さな声。耳をすますと微かだが聴こえてくる。丁度悠里のそばにあった階段の上からだ。
悠里はその声に誘われるように階段を登った。