それを恋だと知ったとき。
階段を登ると屋上へと繋がる扉は開け放されていて、先ほどよりもはっきりと声が聴き取れた。
「……歌」
静かに屋上に足を踏み入れる。
そこにいたのは1人の少女だった。
うなじ辺りで二つに束ねた黒髪が風に揺れる、大きめのメガネをかけ、指定の制服をきちんと着こなした少女。
地味な印象を受ける彼女だが、その口から紡がれる歌はとてもきれいで力強かった。
そして何より夕陽に照らされた彼女の横顔からは溢れんばかりの楽しさが伝わって来て…………美しい、と思った。
「今の歌……アンタ、だよな」
「……え?」
これが2人の出会いだった。