それを恋だと知ったとき。
放課後。誰もいない屋上。
私は人知れず歌を紡ぐ。
音楽がすき。歌うことがすき。誰に聞かせるでもない、ただ、すきだから。自分のために歌う。
これが私の日課。
「〜〜〜♪」
ただその日はいつもと少し違っていて。
あの動画のことがあったからか、動揺していたらしく。
気づかなかった。
「今の歌……アンタ、だよな」
「……え?」
ふいに声をかけられた方を見ると屋上の入り口に1人の男が立っていた。銀髪で、背が高くて、とても整った容姿の。
知ってる。有名だから。
同じ一年生の鈴宮くん。
いや、そんなことはどうでもいい。相手が誰だろうと関係ない、見られてしまったんだから。
「あ、あの!これはその、」
「アンタ何者?素人……にしては上手すぎ」
アタフタと慌てふためく私を他所にツカツカと歩み寄ってくる鈴宮くん。
「素人です、ただの、はい、ただの趣味です」
「ふーん。まぁいいや」
そう言って鈴宮くんはドカリ、と壁に腰掛けて座った。
「え?」
「続き、歌わねーの?」
はい?