春が来る前に、


季節がずれて、秋になったら。紅葉を踏む音で、こぼれ落ちた “ す き ”という心の声を消してしまえ。


冬になったら。雪をかくように、この想いを投げ捨ててしまえ。




──……春。春が来る前にアイスを食べて、夏にしてしまおう。夏を感じてしまおう。




「……美味しいね」


涙をためた、彼が笑う。不器用で下手な笑顔。


「そうだね」


返して、笑った。

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