年上の旦那様は若奥様にメロメロです!!
そんな私にリリエラ様はにこやかに言う。
「あぁ、夢の娘のドレス選び! シャルロッテ、わたくしに任せて頂戴! 綺麗でかつ愛らしく見える素敵なドレスをたくさん作りましょう!」
ん? たくさん???
「リリエラ様、そんなにドレスが必要なんですか?」
私は思わず聞くと、リリエラ様はきょとんと首を傾げつつ話してくれる。
「え? だって毎回同じドレスは着れないわ。家が余裕のない家に見られると、公爵家は大丈夫かってなるでしょう?」
そ、そういうものなのかな? 確かに母も出先によってドレスは変えていたようだけれど。
慎ましかった辺境伯家では、母がドレスにあれこれ手を加えてアレンジしていた記憶がある。
「女性の装いは毎回変えるのが高位貴族女性の嗜みよ。だからシーズンに合わせて最低でも二十は必要で、デイドレスや茶会用合わせたら五十は必要よね」
うんうんと頷きながら話された数に、私は目を回しそうなほどだ。
高位貴族の女性って、ものすごく大変じゃないの……。
田舎の辺境伯領で過ごした私は都会には出なかったし、社交デビュー後もほぼ領地から出なかったので、このドレスの数の必要性に思わず遠い目をする。
そんな私にご夫妻は言った。
「大丈夫よ! そのくらい作ったって破産する家じゃありませんからね。エス商会ご存じでしょう? シャロン家の商会ですからね」
告げられた商会は国内屈指の商会で他国とのやり取りも盛んで、雑貨や食料品に宝石貴金属に衣料などどれをとっても最先端な商会だ。
我が家とも取引があったことを思い出す。
「そう、シャルロッテのご両親とも共に仕事をしていたわ。だからこそ惜しいの。あなたのご両親は人物も商才も優れた方たちだったから」
ため息をこぼす夫人の姿からは、本当に私の親を悼んで惜しんでくれていると分かる。
「でもね、だからといって息子との結婚を絶対と貴方に強いることはしないわ。嫌だと思ったら言ってくれて良いのです。褒められた息子ではありませんからね……」
夫人のため息はさらに深くなった。