君は愛しのバニーちゃん
これは一刻も早く彼女を作ってやらねば、俺よりも先に健が犯罪を犯してしまいそうだ。
健の不気味な笑顔を前に妙なシンパシーを感じ取った俺は、『類は友を呼ぶ』なんて言葉を薄っすらと頭に思い浮かべる。
……嘘だと信じたい。
(俺も……っ。美兎ちゃんの前で、こんな不気味な笑顔を……?)
健の不気味な笑顔を前に、ヒクリと口元を痙攣らせる。
「っ……、やめろっ」
パシリと健の手を叩くと、その反動で地面へと落下したマシュマロがコロコロと転がってゆく。
「あぁーー! 何すんだよ、バカッ!」
バカはお前だと、健に言ってやりたい。
地面から拾い上げたマシュマロにフーフーと息を吹きかけながら、「もう、食えねぇよ……」と本気で嘆いている健に哀れみの目を向ける。
なんだか、その姿が自分と重なって見えたのは……きっと、気のせいだ。そう自分に言い聞かせると、健から視線を逸らして前を向く。
———!!!
逸らした先に見えてきた人物の姿に驚き、俺の瞳はカッと見開くと瞬時に血走った。
(あっ、あれは……!! 間違いなく、うさぎちゃんっっ!!!!)
目の前に見えるのは、可愛らしいピンクの浴衣を着た、マイ・スウィート・エンジェル♡ その傍らには、悪魔改め、最近百合へと改名した花が添えられている。
まさか、こんな所で遭遇しようとは願ってもいない奇跡。
いや——これはまさに、ディスティニー!
お陰様で、妄想でしか拝めなかった浴衣姿も、こうして実際目にすることができたのだ。これはやはり、運命と言っても過言ではないだろう。
「…………」
だだ、俺の妄想と唯一違っていたことといえば、美兎ちゃんの頭にお面が付いているという事。
(何故……、波平……?)
『サザ◯さん』でお馴染みの『磯◯波平』のお面を見つめながら、暫し沈黙したまま困惑する。
流石は美兎ちゃんだ。ハイセンスすぎて、俺には到底理解ができない。
だが——。
どんな美兎ちゃんであろうとも、一生愛し続ける覚悟と自信だけはある。なんならいっそのこと、『波平』ごと愛したっていい。
それだけ、美兎ちゃんのことを愛しているのだ。
(あぁ……っ!! なんて、可愛いんだっ♡♡♡)
ハゲたおっさんを頭に乗せているというのに、こんなにも可愛く見えるのは、世界中どこを探したって美兎ちゃんぐらいしかいないだろう。
その眩しさに思わず目を眩ませると、フラリとよろけながらも昇天しかける。
浴衣の破壊力とは、想像以上に凄まじい。
『波平』のハゲ頭効果もあるせいなのか、いつにも増して美兎ちゃんが輝いて見える。こんなに沢山の群衆に囲まれているというのに、ギンギンと光り輝く天使を前に、俺の下半身はもはや爆発寸前にギンギンだ。
(こっ、これが……っ! 愛故の、羞恥プレイ……ッッ!!?)
ならば、甘んじて受け入れる以外俺に残された選択肢はあるまい。
そう覚悟を決めると、ズキズキと痛みだした股間をモジモジとさせる。
そんな耐えがたい苦痛の中でも、『波平』を頭に乗せた美兎ちゃんの姿を眺める俺は、その神々しくも光り輝くオーラに目を細めながら、美兎ちゃんの浴衣姿に見惚れて目一杯鼻の下を伸ばしたのだった。