君は愛しのバニーちゃん
※※※
俺は電柱の影に身を潜めると、コッソリと顔を覗かせて目の前に見える中学校を眺めた。
美兎ちゃんの合格発表が無事に終わって二週間と少し。俺は、ちょっとした尾行を続けている。尾行とは言ったものの、要するにストーカーだ。
家庭教師をお役御免になってしまった今となっては、美兎ちゃんに会う口実が見つからないから仕方がないのだ。
定期的にラ◯ンのやり取りをしているとはいえ、そのほとんどが潰れた顔の『山田さん』の写真付き近況報告。そんな犬っコロの報告などではなく、俺は美兎ちゃんの写真付き近況報告が欲しいのだ。
それとついでに、好きなタイプと好きな体位と俺への気持ちも、是非とも教えてもらいたい。
「…………」
とはいえ、そんなこと本人に言えるはずもなく、悲しいかな気付けばストーカーとなっていた。俺にできることといえば、こうして陰ながら美兎ちゃんの身の安全を見守ることしかできないのだ。
今日も今日とて、安定のストーカーの真っ最中である。
自分の卒業式をさっさと済ませた俺は、飲み会の誘いを全て断ると美兎ちゃんの学校へとやって来た。なんという運命か、今日は美兎ちゃんの通う学校でも卒業式が行われているのだ。
待ちに待った美兎ちゃんの卒業式。本当なら堂々と嫁にもら……いや、祝ってあげたいところだが、それができないならせめて見守ってあげたい。
美兎ちゃんが大人へと一歩近付く、大切な日なのだから——。
(完全なる大人になる日は、俺がちゃんとお手伝いしてあげるからねっ♡♡♡♡)
「……グフッ♡ グフフフフッ♡♡♡」
電柱の影に身を潜めながら不気味に微笑むと、通りすがりの通行人が不審そうな目を向けて俺を避けてゆく。そんなことお構いなしで”貫通式”の妄想に酔いしれると、危うく垂れかけたヨダレをジュルリと啜る。
どうやら無事に卒業式を終えたらしく、チラホラと校門前へと集まり出した生徒達。最後の記念にと、同窓生らと楽しそうに写真を撮っている。
そんな光景を眺めながら、俺は美兎ちゃんの姿を探して懸命に目を凝らした。
———!
同窓生らに囲まれて、楽しそうに笑っている美兎ちゃん。その姿を捉えた俺の瞳は瞬時にハートを型取ると、鼻の下を目一杯伸ばして顔を蕩けさせた。
(あぁ……! 俺の愛すべき天使ちゃん!! 相変わらず、なんて可愛さだ……ッッ♡♡♡♡)
電柱の影からそっと右手を伸ばすと、その手に握った携帯で美兎ちゃんの姿を連写しまくる。こんな事をしていて言うのもなんだが、決して読者の皆んなには真似はしないで欲しい。
デレデレとした顔で連写しまくる今の俺の姿は、間違いなく変態ストーカーだ。皆んなにはこうはなって欲しくない。
「あぁ……っ、うさぎちゃん♡ 愛してるよ……♡♡♡♡」
溢れ出る想いに小さく吐息を漏らすと、目の前に見える美兎ちゃんに向けて愛を囁く。
許されるものなら、今すぐ君の目の前に姿を現してこの想いを告げたい。だが、今日の俺は生憎と身変装。『カテキョの時間』がないのだから当然と言えば当然なのだが、卒業式終わりに急いで駆け付けたので、ダサ男へと変装する余裕がなかったのだ。
スーツ姿とはいえ、チャラさが隠しきれていない今の俺では、美兎ちゃんの目の前に姿を表すなんて事はできない。
悔しさにグッと涙を堪えると、携帯越しに見える美兎ちゃんの姿を見つめてハァハァと身悶える。
———!!!
携帯に映し出された光景にピキリと青筋を立てると、みるみるうちに鬼のような形相へと変わってゆく俺の顔。右手に持った携帯をミシリと響かせると、俺は勢いよく校門前へと視線を移した。
そこに見えるのは、楽しそうに美兎ちゃんと話している少年の姿。その頬はほんのりと赤く染まり、明らかにデレデレとしているのがわかる。
(っ、市橋ぃぃぃいい……ッッ!!!!)
俺は電柱の影に身を潜めると、コッソリと顔を覗かせて目の前に見える中学校を眺めた。
美兎ちゃんの合格発表が無事に終わって二週間と少し。俺は、ちょっとした尾行を続けている。尾行とは言ったものの、要するにストーカーだ。
家庭教師をお役御免になってしまった今となっては、美兎ちゃんに会う口実が見つからないから仕方がないのだ。
定期的にラ◯ンのやり取りをしているとはいえ、そのほとんどが潰れた顔の『山田さん』の写真付き近況報告。そんな犬っコロの報告などではなく、俺は美兎ちゃんの写真付き近況報告が欲しいのだ。
それとついでに、好きなタイプと好きな体位と俺への気持ちも、是非とも教えてもらいたい。
「…………」
とはいえ、そんなこと本人に言えるはずもなく、悲しいかな気付けばストーカーとなっていた。俺にできることといえば、こうして陰ながら美兎ちゃんの身の安全を見守ることしかできないのだ。
今日も今日とて、安定のストーカーの真っ最中である。
自分の卒業式をさっさと済ませた俺は、飲み会の誘いを全て断ると美兎ちゃんの学校へとやって来た。なんという運命か、今日は美兎ちゃんの通う学校でも卒業式が行われているのだ。
待ちに待った美兎ちゃんの卒業式。本当なら堂々と嫁にもら……いや、祝ってあげたいところだが、それができないならせめて見守ってあげたい。
美兎ちゃんが大人へと一歩近付く、大切な日なのだから——。
(完全なる大人になる日は、俺がちゃんとお手伝いしてあげるからねっ♡♡♡♡)
「……グフッ♡ グフフフフッ♡♡♡」
電柱の影に身を潜めながら不気味に微笑むと、通りすがりの通行人が不審そうな目を向けて俺を避けてゆく。そんなことお構いなしで”貫通式”の妄想に酔いしれると、危うく垂れかけたヨダレをジュルリと啜る。
どうやら無事に卒業式を終えたらしく、チラホラと校門前へと集まり出した生徒達。最後の記念にと、同窓生らと楽しそうに写真を撮っている。
そんな光景を眺めながら、俺は美兎ちゃんの姿を探して懸命に目を凝らした。
———!
同窓生らに囲まれて、楽しそうに笑っている美兎ちゃん。その姿を捉えた俺の瞳は瞬時にハートを型取ると、鼻の下を目一杯伸ばして顔を蕩けさせた。
(あぁ……! 俺の愛すべき天使ちゃん!! 相変わらず、なんて可愛さだ……ッッ♡♡♡♡)
電柱の影からそっと右手を伸ばすと、その手に握った携帯で美兎ちゃんの姿を連写しまくる。こんな事をしていて言うのもなんだが、決して読者の皆んなには真似はしないで欲しい。
デレデレとした顔で連写しまくる今の俺の姿は、間違いなく変態ストーカーだ。皆んなにはこうはなって欲しくない。
「あぁ……っ、うさぎちゃん♡ 愛してるよ……♡♡♡♡」
溢れ出る想いに小さく吐息を漏らすと、目の前に見える美兎ちゃんに向けて愛を囁く。
許されるものなら、今すぐ君の目の前に姿を現してこの想いを告げたい。だが、今日の俺は生憎と身変装。『カテキョの時間』がないのだから当然と言えば当然なのだが、卒業式終わりに急いで駆け付けたので、ダサ男へと変装する余裕がなかったのだ。
スーツ姿とはいえ、チャラさが隠しきれていない今の俺では、美兎ちゃんの目の前に姿を表すなんて事はできない。
悔しさにグッと涙を堪えると、携帯越しに見える美兎ちゃんの姿を見つめてハァハァと身悶える。
———!!!
携帯に映し出された光景にピキリと青筋を立てると、みるみるうちに鬼のような形相へと変わってゆく俺の顔。右手に持った携帯をミシリと響かせると、俺は勢いよく校門前へと視線を移した。
そこに見えるのは、楽しそうに美兎ちゃんと話している少年の姿。その頬はほんのりと赤く染まり、明らかにデレデレとしているのがわかる。
(っ、市橋ぃぃぃいい……ッッ!!!!)