死にたい私と優しい彼。
ーガチャー
「適当に座ってて。今暖かい飲み物だすね。」
「名前はなんて言うの?僕は、中峰颯人20歳。」
「私は……。中瀬明莉16歳です…。」
「16歳?!若いね笑高校生かー。」
「はい…。」
「あ!ご飯今出すね!」
この人は、どうしてこんなに優しいのだろう。
「はい!ご飯と飲み物!これで大丈夫?」
「あ、ありがとうございます…。あの、どうしてこんなに優しくしてくれるんですか?私なんて、あんな所にほっておいて凍え死にした方がいい人間なのに。なぜ?」
「んー…。助けるのに理由なんていらないと思うな〜。それに、明莉ちゃんは死んでいい人間じゃないよ!死んでいい人間なんてこの世にいないと思うなー。」
助けるのに理由なんていらないと答えてくれた彼は本当に優しいんだなって思った。
「あの…。傷の事とか聞かないんですね。」
「んー。言いたくないことは誰にだってあるし、言いたいなって思ったら教えて欲しいな。」
颯人side
「お疲れ様です!明日もよろしくお願いします!」
そう言って、僕はバイト先を後にした。
今日…寒いな…。ご飯買って帰ろう。
警察…?それに高校生くらいの子?
その子は、飲食店が多い通りの方を歩いていた。止まっては、見て。止まっては、見ての繰り返しだった。僕は、声をかけた。
「君、どうしたの?お腹すいてるの?」
その子は、不思議そうに僕を見る。けど、どこか切ない目をしていた。こんな夜寒い中制服だけなんて女の子にとってはつらすぎると思った僕はその子を家に入れた。
家に着いた途端怯えていた。
その後に、多めに買っていたご飯を2人で分けることにした。
「はい、どうぞ。」
「あ…ありがとうございます…。」
その子の体を改めて見ると腕にはあざ、刃物で切られたような傷跡、顔の傷など様々な所に傷が沢山あった。ぼくは、その子が言ってくれるまで聞かないことにした。
明莉side
「お風呂入っておいでー。」
そう言われたので、お風呂に入ることにした。
「あー。いつも見てるけど、傷増えたな〜…えへへへ…。」
「あ、出た?明莉ちゃんは、ベッドで寝ていいよ。僕は、ソファで寝るね。おやすみ〜。」
「おやすみなさい…。」
ーベッドに入ろうと思ったけど、中々寝付けなくてベランダに出た。ー
(今頃、お父さんやお母さんどう思ってるんだろう。でも、今颯斗さんの家に居るからこんなのバレたらもっと傷が増えそうだな…。)
「死にたいな…。ここからなら飛び降りて死ねるかな…。颯斗さんには迷惑掛けちゃうけど、こんな価値のない人間1人くらい居なくなったってみんな気にしないよね…。」
ーそう思って、柵に足をかけようとした時ー
「うわっ…!」
「あ、危なかった…。」
「は…やとさん?」
「……。」
ーた、叩かれる。怒られる。ー
ポンポン
「え…?」
「死にたいだなんて言っちゃダメだよ。明莉ちゃんにはこれから先色んな未来があるのに簡単に死のうとするなんてだめだよ」
「み…らい?私には未来なんて無いよ…!死んだ方がいいに決まってる!!」
「……。」
「……。」
「…じゃあさ、明莉ちゃんには幸せになって貰う。」
「…は?…」
「まぁ、幸せになるって言っても色んな事があるけど…。明莉ちゃんが今のところ幸せだなって思うことある…?」
ー幸せ…?それがなんなのかはよく分からなかったけど今日1日での出来事が私にとって特別な思いに変わっていたのは確かだ…。ー
「颯斗さんと一緒に居ることかな…。」
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