没落姫の溺愛婚~双子の寵姫も楽じゃない!?~
プロローグ
 絶対に、忘れない。

──没落した家の姫を妻にしたって、役に立たないしな。

 それは、三夜の通いの最終日。

 結婚を目の前にして、信じてた婚約者に文越しに本当に呆気なく、冷たく捨てられたこと。

 身寄りもなく、頼れるあてもない。

 生きていく道すらどこにもなくて、ただただ声を上げて泣いていた。

 そのあと、偶然に邸の近くを通った優しい双子の青年が泣いていた声を聞いていてくれて、部屋の隅っこでそんな自分を見つけてくれた。

『ひどい男もいたものだ。
泣かないで、私達の邸においで』

 涙をそっと優しく拭ってくれて。

 そして、ぎゅうっ、と強く抱きしめてくれた。

 あの日のこと、きっとずっと、覚えてる。

 抱きしめてくれる温もりが心地よくて優しくて、すごく嬉しかったから。

 一生をかけて、二人から与えてもらったこの恩を、ちゃんと自分の手で返したい。

 どんな形でもいい。

 恋人になりたい、寵姫になりたいなんて、甘すぎる夢は絶対に見ないから。

 せめてずっと、傍にいさせて下さい。

 それが唯一の、願いなんです……。


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