夜の隙間のガードレール
これは悪手。
自分で決めても、勝手に揺らぐ。
「にしてもびっくりしたー。詩花が学校に来てないって、先生が慌てて言ってくるんだもん」
「え、と、」
「俺の教室まで走ってきてさ。ま、おもしろかったからいいけどね」
何もなかったならいいよ。
って、頷く言葉に罪悪感が募って。
「ごめんなさい……、迷惑かけてしまって」
「顔上げてよ。怒んないから」
「で、でも」
なんとなく悔やんだ。
迷惑かけないようにって諦めようとしていたのに、逆に迷惑だけを押し付けてる。私。
詩花、と名前を呼ばれて顔を上げた。
「安心して。親には言ってない。むしろうれしかったんだ」
「言ってもよかった、のに」
「めんどくさいだろ、叱られんの。詩花は怒られ慣れてないみたいだし」
街灯が、彼の茶色の髪を、きらめかせる。
きれい。
笑顔が。
さっき拭った目が、また涙を取り戻してしまいそうだった。
「うれしい、って、」
「うん。だって、いつもは色々我慢してるみたいだから」
ぐるぐると捻れていくネガティブを、彼は簡単に解いて。
「期待とか詩花に向いてて、それぜんぶ返してあげてるし。すごいなあって……俺そーゆうの無理だし」
敵わない、ってこと、知らしめてくる。