夜の隙間のガードレール
「ストレス発散って大事じゃん」
「……、ストレス」
彼にはストレス発散、に見えたの、か。
たしかにたしかにそうでしょう。でも違う、ちがう、違う。違うよ、全然。これはぜんぶ。
私のための。
……言えやしない。
「ありがとう、ございます」
「なんで?」
「…探してくれて」
「いいよ、それくらい」
知ってます。
これくらいのこと、構わないんでしょ?
だって私。
「 “ 兄妹 ” なんだから」
あなたの、いもうと、だから。
「つっても義理だけど、ね」
って、照れくさそうにわらう顔が、苦しい。
わかってるから、言わなくても。無意識に釘を刺してくるあなたが、無意識なだけ恨めしい。
ぜんぶ無駄なのに。
あなたはある日私の兄として紹介されて、知らない女の人と共に私の家に住むことになった。
私はある日あなたの妹として生活を決定、戸籍は簡単に付け加えられてしまっていた。
父親は数年ぶりに手放しで微笑み、知らない女の人と睦まじく寄り添って。
……知らずにいた。
私の兄になったあなたは、私がずっとずっと、ずっと前から。
ああこういう悲劇っぽいの、こっちが無駄だ。
早かれ遅かれ結末は決まっていたんでしょう、きっと。
あなたは私に “ 妹 ” を望んだ。
昔からきょうだいが欲しかった、とわらったあなたが、眩しくて、本当は心底苦しくて。
「詩花?」
知らずに。知ってて。知らずに。
気づいて。気づかず。気づいて。
私はもうずっと前から。