夜の隙間のガードレール



二度程私の頭をくしゃくしゃにした彼は数歩先を歩き出す。


それだけで涙が浮かぶから、もう今日は仕方ない。


すきで、すきで、苦しかった。


苦しいけど、すきで。


わらってくれると笑顔になれて、名前を呼ばれるとうれしくて、他の女の子といると悔しくて。


決して打ち破れないような枠に区切られたとき、ショックで何も見えなくて、でも愛想笑いだけで乗り切って。


すきです。


すきです。


あなたのことが好きです。


振り向いて。


気づかないで。


私のこと見ていて。


振り向かないで。


気づいて。


見なくていいよ。


支離滅裂でも、そのぜんぶ、あなたに渡すことができればいいのに。


深呼吸。


一歩踏み出せば失恋。


一歩退くと長引いちゃう執着。


深呼吸。


選択肢なんて最初からない。




「待って」




今夜だけだから。


優等生を捨てて、非日常に浸って、あなたのこと馬鹿正直に想って泣くのは。


今夜で過去形。


好きだったの、私、あなたのことが。




「待って、お兄ちゃん」




この道路しか、用意されていない。







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