夜の隙間のガードレール



カラオケ。程よく流れる爆音が私は好き。


ひとりで来るなんて勇気があるな、と言いたげだったあの店員。


たったこれだけのことで面倒くさい。そりゃあ差別も偏見もなくならなくて当然。喧しい。ドリンクと料理だけ運んで給料貰ってなさい。


暗い部屋で入れ替わっていく映像だけが目に痛かった。


間奏が大きく響く。


そのちょっとの休憩にコーラを呷る。


喉に染みて、爽快。


不安になるような頭が痛い旋律。




「『静寂を破る、』」




自分の声には確実に合わないキー。


わかっている。息が苦しい。わかっている。


グラスを机にガシャンと乱暴に押し付ける。


揺れる。


苦しい。


八つ当たり。


喉が限界。


でも続けた。




「『頬を刺す朝の山手通り、』」




勝手に泣きそうになる自分が、深いところでちいさく嗚咽をこぼす。


優等生の自分が、懺悔する。


マイクを離さない自分が、次の曲のイントロに息を整える。


ネオンカラーの画面が急に黒に染まって、情けない私だけが映りこんだ。









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