夜の隙間のガードレール
黒髪。化粧、つり上がったアイライン、派手にきらめくアイシャドウ、赤いリップ。普段選ばないようなモノトーンの恰好。
表情、貧相な顔をした私。
「……似合わない」
ううん、いつもの完璧な外面スマイルより似合ってる。
ただ、青白い顔には赤が似合わないだけで。
脱力してソファーに身体を預けた。
……私、何やってるんだ。
イントロが忙しく流れて、早く歌えと急かしてくる。だけど無理。冷めた。代わりに目頭、あつい。
奥歯を噛み締める隙に、破綻してしまわないように。
決壊すれば終わり。決壊する前に私はなくしてあげなきゃならない。
「『かじかむ指の求めるものが』」
見慣れた その手だったと知って。
なんて、殊勝、きれいな恋愛、幸福に満ちる。
ああわかっていたのにこれは自虐。
泣きたくなんかない。
フリータイムのカラオケ、独り、不幸を身につけて嘆いて。これで満足なのか、私。
うん、満足。
だってずっと報われないよりフラストレーション削減中。
今なら余計な壊れた残骸、私のなかから掃いてしまっても構わない。
本当は勉強するより、読書をするより、数式と向き合うより、英単語を聞き流すより。自分のなかの不快を殺してやりたかった。
だから今日はおやすみなのよ、優等生。
学年首席を謙虚に遠慮する私は、一旦水を被って目を瞑ってなさい。
何も考えたくなかった。