夜の隙間のガードレール



閑静に嗚咽を零さないように唇を噛む。


滑稽だ。わかりきっていた結果。


ぜんぶが上手くいくのは、おとぎ話のお姫さまだけ。


現実はもっと痛くてひりひりしたものばかりだ。
ごめんなさい、って私が謝っても、意味なんかない。価値はゼロ。それでもいいけど、謝らないで。


最後の可愛げ、だと受け取ってくれたら。


ああだめだ。すぐに愛想笑いで優等生を演じてしまう。


涙は袖に染み込ませて、は、と息をつく。


終わり。


終わり終わり、終わりだよ。


決めてた。


優等生の道を外していいのは、1日限り。


家に帰ったら怒られるかな。手を上げられたらどうしよう。失望されたくない。笑顔でいなきゃ。


ほら。もう私はこういう思考でつくられてる。


手にしていた携帯がチカリと白くうつった。




[ 後ろ見て。 ]




放っていていいと言ったのは私でも。


…やめて。


溜め息をつくより、思考を練るより、そのひとことと名前が。


…ああ私って本当にバカだ。


簡単に私を戻してしまおうと足が止まる。




詩花(しいか)!」




聞き慣れた、声が、呼ぶから。


とか言い訳付なくても私は簡単に振り向いて。


その笑顔を見たくなるんだ。




「遅いからすげえ心配したよ」

「ご、ごめんなさい」

「いいって。何もなかった?」




近づいてくる彼は暗闇にそぐわない明るい笑みで、真っ直ぐにきてくれる。







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