その声の優しさに包まれたい1
第一章

プロローグ

季節は春。

周囲には、梅が満開に咲いている。

4月になれば、この街の木々の蕾も桜として咲き乱れる。

街中の人々は今か今かと待っている。

市街から離れた場所に、ある研究の建物が建てられている。

その建物は、動物達の生態を研究したり、病気になったりした時の研究もなされている場所。

大きな運動場もいくつかある。

時々、研究所で飼っている動物達を運動させている。

研究員達は、施設近くの住宅街に住んでいる。

今日も研究員達は、動物の様々な研究をしていた。

PM15時。

「パパ!ママ!」

黄色いワンピースを着た小学一年生くらいの女の子が、両親を見つけて声を掛ける。女の子はニコニコと、少し年上の男の子と仲良く手を繋ぎ、一緒に施設の方へ嬉しそうに歩いてくる。

「彩芽!」

父親が娘の名前を呼びつつ手を振る。

女の子の名前は、彩芽。

「こんにちは雪也くん。」

母親らしき女が、雪也と言う男の子に笑顔で挨拶をする。

一緒に居る男の子は、雪也。

雪也は、今年小学5年生になる。

彩芽の5つ上。

「こんにちわ直樹叔父さん。こんにちわ綾乃叔母さん。」

直樹と言うのは、彩芽の父親の名前。

綾乃と言うのは、彩芽の母親の名前。

「彩芽を連れてきてくれてありがとう。いつも助かるわ。」

「あの二人なら中にいる。」

「はい。ありがとうございます。」

彩芽の父親と母親に会釈をしつつ答える。

あの二人と言うのは、雪也の両親の事を言っている。

「手を離して雪也兄ちゃん。」

「わかった。」

彩芽の手をそっと放す雪也。

すると彩芽は、両親の元に元気よく走っていく。

母親の足元に抱きつく。

白衣に抱きつき、ギューッと下に掴みつつ顔を左右に振りながらこすりつける。

「彩芽、もう大事な白衣がくしゃくしゃになる。」

「抱っこしてママ。抱っこ。」

白衣にスリスリした顔を上げ、母親の顔を甘え顔で見つめる彩芽。

「はいはい。白衣から手を放してくれたら抱っこする。」

彩芽の母親は、娘に会えた事に喜びつつ、両脇を抱えて抱っこをする。

母親に抱っこされ満足げな彩芽。

父親も、その姿を見て頬を緩ませ笑う。

「パパとママに早く会いたかった。」

「パパもだ。」

「彩芽、いつも寂しい思いさせてごめんね。」

「お仕事だもん。我慢できる。」

本当に絵になる仲良し家族。

「俺、中に入って両親を探します。」

彩芽の父親に言う雪也。

「第二研究室で一緒にいると思う。エミューが居ないから、心当たりの施設内を探しながら見つけて帰るって言っていた。」

「あっ、はい。」

彩芽の父親は、雪也の両親の今の状況を伝えた。

エミューとは、雪也が飼っているラブラドールレトリバーの男の子の事。

「両親を今から探します。」

「あぁ。またな雪也くん。」

雪也は、両親とエミューを探しに施設内に入って行く。

彩芽達は、雪也が施設に入るのを見届けてから、家へ帰る為車に乗り込む。

「パパ、今初めてシートベルト止める事ができたよ。」

父親は、彩芽が座る後部座席を振り向き。

「おっ!本当だ。出来たか。」

「凄いじゃない彩芽。」

同じように、母親も後部座席を振り向き褒める。

「さぁ、家に帰ろう。」

彩芽達家族は、楽しげに会話しながら施設を後にした。

その頃。

雪也は施設内に入り、両親が第二研究室に居る事を聞いたので向かっていた。

「こらー!」

施設内に響き渡る大きな声。

女の人の声と犬の鳴き声が響き渡る。

ワンワンワン。

犬の鳴き声?

「エミューが近くに居る?」

周囲をキョロキョロする雪也。

何処にいる?

姿は見えないが、近くにいるのだと解る雪也。

「エミュー待ちなさい!遊びは終わり!帰るよ!もうどこまで走るのー。」

女の人は、間違いなく母親の声。

エミューが捕まらなくて困っているような叫び声。

エミューの年齢は、1歳になったばかり。

何処にいる?

すると雪也は、真後ろからドーンと、エミューにお尻を押されコケる。

「うわぁ!痛っ。」

ふらつきながら尻餅つく、クルッと後ろを向く雪也。

そこには、口を大きく開き舌をたらし、ブンブンと尻尾を振って座っているエミュ―が居た。

ハァハァハァハァ。

「エミュー!ドーンと押したらコケたじゃないか!」

ワンワン。

エミューは、雪也に近づいて顔をペロペロ舐める。

「おい、やめろよ。くすぐったい。」

そこへ。

「エミュー!もう!ここに・・・居た・・・のね。良かったー。」

エミューを見つけ。

ホッとしつつ、雪也の母親は、廊下に息切れをしながら座り込む。

「母さん!ちょっと大丈夫?」

放心状態な姿でいる。

「やっと追いついた。エミュー!随分と探したぞ。由美子?あら?おーい。立つことできるか?」

雪也の母親の名前は由美子。

何で廊下で座り込んでいるのか?雪也に声かける父親。

「どうした?」

「追いかけていたら、母さんも走っていたんだけど、体力が、エミューのせいで限界がきて放心状態見たい。」

「なるほど。そうか。ハハハハ。」

「手を貸して。」

雪也と父親は、母親をゆっくりと支えながら立たせる。

「俊也も雪也もありがとう。」

顔を見ながら話す由美子。

俊也は、雪也の父親の名前。

「エミューが、産まれた時より元気になってよかったな。」

「そうね。全速力で良く走ってくるから、予想もしないほど元気すぎる。」

「あの時の苦労が報われたな。」

「本当に助からないという状況の中、奇跡だったわ。」

4人で不可能を成し遂げた。

研究所の周りは、一部賛成をしているが、ほとんど理解に苦しむと言われ反対をしていた。

国でさえも成功確立が低いと反対だった。

「この小さな命を守る事は、きっと、採取した検体で、研究が進めば治る確率が高くなるからと、賛成の会社の署名も渡し押し切って許可をもらったな。必死に情報も集めて、もう危篤だぁーってなり、24時間必死に奇跡を信じ救った。人生に残る思い出だ。」

エミューは産まれた時に助かる確率が低い病気をしていたらしい。

研究者の彩芽の両親と雪也の両親が救ったと話していた。

俊也が由美子を支えようとすると、由美子が笑顔で俊也に顔を向けて。

「もう歩けるわ。」

「本当か?」

「家に帰りましょう。」

エミューは由美子達の周りで、まだ帰らないのかと尻尾フリフリして待っている。

ワンワンワン。

「エミュー帰るぞ。」

雪也達家族も、エミューと一緒に仲良く家に帰った。


それから幾日が立ち。

研究所の内部では、研究学会の話が飛び交っていた。

研究員達は徹夜しながら、当日に向けて、働きながら自分の論文やデータをまとめる作業をしていた。

そんなある日の午後21時頃。

誰も施設には居ない時間。

一台のシルバーの車が施設玄関に止まる。

降りてきたのは、研究所の部長の戸ノ上と主任の鈴原だった。

二人は研究所の中に、懐中電灯をそれぞれ持ちながら入ってゆく。

「鈴原、三か月後に開かれる動物研究発表会で、高城達が、エミューの病気の研究発表をすると言っていたのは本当か?」

戸ノ上が、鈴原に歩きながら聞いた。

情報は本当なのか?
そう問いかける。

「はい。エミューが、ここに来た時に酷い衰弱で、治療できる状態でなかったけれども、海外の治療法を、国を動かして4人は治療を行いました。我々も渋々許可しました。そのおかげでエミューだけが意識を取り戻し、治療をし助かり生き延びました。」

「あぁ。全身の血管異常や筋肉を動かす神経が上手く動かせない状態の珍しい病気だった。手遅れに近い状態で、俺は失敗をしたくなく諦めてしまった。高城達は、24時間付きっきりで看病しつづけた。もう呼吸も危うい状態でいたから、エミューを治す為に、海外も含めて治療方法を探していた。」

「そして、救うための論文も技術の資料を見つけて、海外の動物学者に手術中に聞きながら治しました。その時の細胞検体が残っていて、同じ症状の動物を治すために、研究を、長年高城達はしていました。何かを見つけたらしく、それを研究会に発表をすると意気揚々としていました。」

戸ノ上は、目を吊り上げ悔しがる表情をしながら鈴原に。

「とにかく第一研究室Bに向かうぞ。何としても、何としてもその研究会に発表する情報と検体を盗むぞ。」

「はい。」

戸ノ上達は、高城達が研究所に居ないうちに研究資料の情報を奪うつもりだ。

そんな事も知らない高城達は、穏やかに家族団らんの一日を過ごしていた。

「まだ見つからんのか?」

「どこにあるのか?」

「もっとしっかり探せ!」

「はっ・・・はい。解りました。」

戸ノ上と鈴原は、高城達の研究資料情報を、泥棒が入ったような状態にしながら探しまくっていた。

「何処なんだ。小さな見落としもしてはならない。必ず見つけてくれ。」

「はい。」

1枚1枚調べてく。

検体も1個1個ラベルも見つつ調べる。

第一研究所Bにないのか?

やはり昼間に盗む方が良いのか?

戸ノ上も鈴原も必死に探している。

「ないぞ!」

「ここもです。最近の2025年のはあるんですけど・・・。」

あっちこっちの戸棚を開ける。

動物達も、激しく鳴いてしまうくらい探す。

「今のはいらん。エミューの経過などの資料だぞ。ここにはないのか?」

すると戸ノ上が、ある場所を思い出し鈴原に。

「鈴原、あそかもしれないぞ。」

「あそことは・・・何処ですか?」

鈴原は聞き返す。

戸ノ上は確信しつつ口を開き。

「ここに、エミューの細胞検体や研究資料がないのなら、地下B2にある危険物取扱室にある可能性が高い。」

「なるほど!あそこなら、普段は近寄らないですから可能性はあります。そうかもしれませんね。」

首を縦に振りつつ鈴原は答えた。

「ここにないのならば・・・絶対あそこにあるな。」

「今日はここまでにしよう。」

周囲を見回す戸ノ上。

「いつ奪うのですか?。」

「あの4人が研究に没頭している最中だ。もう3時だ。この広げた場所を片付けないといけない。」

「なるほど!隙を見てですね。」

「必ず見つける。」

「必ず見つけましょう。」

「世界と繋がり、評価されるの私だ!私の方が、より動物研究についても研究成果は上げている。世界は、何故彼等を私より評価しているのか?クソッ!悔しくてたまらない。」

自分が評価されないので悔し顔。

「戸ノ上部長絶対に奪いましょう。作戦を立てて出直しましょう。」

資料を探すために、がむしゃらに色々周囲を散らかした。

入室した状態のように戸ノ上と鈴原は手分けして綺麗にしていく。

「このくらいでいいですかね?」

鈴原が周囲を見渡して言う。

戸ノ上も周囲を見渡し。

「うむ。大体このくらいでいいだろう。」

二人は部屋の電気を消して研究室を出る。

長い長い廊下を歩き正面玄関へ行く。

正面玄関について、二重ロックのドアの鍵を三つ閉めていく。

内側と外側の二重ロックもきちんとする。

「よし!これで鍵はロックされた。」

ドアが開かないか揺らす戸ノ上。

「ここに居てください。車をここに寄せます。」

鈴原は、乗ってきた車へと向かう。

戸ノ上は、大事そうに研究資料を抱えて車を待つ。

キィィィ。

ガチャ。

戸ノ上は、勢いよくドアを開ける。

「帰るぞ。」

そう伝え。

バン!っとドアを閉める。

「帰りましょう。」

彩芽の両親と雪也の両親の身に危険が迫っている事を、彩芽も雪也も穏やかな眠りの中で知る由もなかった。



それから三か月後。

彩芽の家では、学校へ行く準備と仕事に行く準備をしていた。

「ママ、今日は白とピンクのワンピースを着たい。」

彩芽が、アニメのキャラクターのパジャマ姿で、眠そうな声を出しながら直樹と綾乃の寝室にきて言った。

「わかった。自分の部屋で待ってなさい。」

綾乃は彩芽に返事をして、パジャマから自分の仕事着に着替える。

あれこれ鏡の前で選び、今日は白とグレーのパンツスタイルにする。

その頃彩芽は、タンスの中をあさっていた。

1段目をひっくり返し、2段目もひっくり返すありさま。

「あーら彩芽。こんなに広げちゃって。」

床に広がった服を見て困った顔をする綾乃。

「だって・・・。」

探すのを諦めた彩芽。

「ここよ。三番目の所。重なっているから見つけれない?」

タンスに近寄り、三段目の引き出しを開けワンピースを探す。

「ママ、本当に三番目にあるの?」

彩芽は、横に座ってみている。

「んーっと。あっ、これかな。これだわ。」

奥の方にあるのを見つけ。

白と淡いピンクのワンピースを引っ張り出す。

「はいどうぞ。」

彩芽に、タンスから出てきたワンピースを手の上に渡す。

「ありがとうママ。」

ニコっと口角を上げて微笑む彩芽。

「どういたしまして。さぁ、着替えて。」

彩芽は着ているパジャを床に脱ぎ捨て。

出てきたワンピースに急いで着替える。

「ママ、後ね、髪の毛をキラキラ付きの薄黄緑のシュシュのゴムで縛って。」

彩芽は髪をかき上げて、どう縛ってほしいか表現する。

「いいわよ。洗面所でしてあげる。下に降りましょう。」

「うん。」

彩芽と綾乃は、髪を縛る為に一階の洗面所に行く。

「彩芽、髪の毛を結ぶからジッとしてて。」

しっかりと、ボサボサした彩芽の髪をクシでとかす。

「耳の後ろくすぐったい。」

耳の後ろを右親指があたる。

それがとてもくすぐったいので、クネクネと体までよじらせる。

「もうすぐ終わる。」

彩芽の髪をポニテ―ルにする。

「うわぁ。久しぶりのポニーテール。」

「似合ってるわ彩芽。さぁ朝食にしましょ。」

「はい。」

二人は、楽しく会話しながら洗面所を出てリビングへ向かう。

一階で朝食を作っていた直樹。

「二人とも遅いぞ。」

朝食をダイニングテーブルに置きながら言う。

「彩芽のワンピース探しを手伝っていたの。」

「そうか。雪也くんに見せるんだろう?」

そう言って椅子に座る直樹。

「うん。そう。可愛いって思ってくれるかな?」

「うんうん。パパも可愛いと思うから大丈夫だと思う。」

そんな会話の中で綾乃が。

「雪也くんも彩芽に可愛いって言ってくれるんじゃない?」

彩芽の目を見て答えた。

すると、純粋な目で。

「ママも言うなら自信が出てきた。」

そう言い返した彩芽。

「ねぇ、二人とも時計を見て。」

それを聞き。

「あ!急いで食べないと遅刻する。」

直樹に、ダイニングテーブルにある黄色い淵の時計を見せる彩芽。

「そうそう。言い忘れるところだった。彩芽、今日は洋子叔母さんの家で帰りを待っていてくれるか?」

「一人でじゃないわよ。雪也くんとエミューも一緒。」

彩芽は、両親が仕事で遅くなるので洋子叔母さんの所で待っていてほしいと言われた。

「朝まで?」

そう彩芽はつぶやき。

寂しそうな顔をする。

「朝までかかるかもしれない。ごめん。大事な仕事を、雪也くんの両親と片づけないといけないの。」

少し沈黙し。

彩芽は下向いている顔を上げ。

「一生懸命お仕事してるんだもん。パパとママを待つ。雪也兄ちゃんとエミューがいるなら大丈夫。」

我慢をしないといけないのは度々ある。

朝までかかる仕事は年に数回。

毎回、その時は預けられている。

徹夜で三日間や一週間にもなる時がある。

「お話はここまで。学校に遅れちゃうから食べましょ。」

三人は仲良く朝食を食べた。


その頃、雪也の家族も朝食を食べていた。

「雪也、今日は学会の準備があるから遅くなるかもしれない。」

俊也は新聞を読みつつ、雪也に今夜仕事で徹夜になると伝えた。

毎度のことだ。

そう思い。

「じゃ、お泊り。」

オムライスを食べながら話す雪也。

「洋子叔母さんに、エミューと雪也と彩芽ちゃんを預かってと伝えているわ。」

パンをほうばりながら言う由美子。

俊也は朝食を食べ終わり。

左ポケットから煙草を出し火をつける。

ひと吹きし、右手で煙草を持ちながら雪也に。

「二人と一匹で仲良く過ごすんだぞ。彩芽ちゃんは女の子だから、遊んでる時でも怪我はさせないよう気をつけてやれ。お前は年上なんだからな。」

「うん。わかってる。ごちそうさま。」

椅子から立ち上がり、シンクに食器類を入れる。

そのままリビングから、ランドセルが置いてある玄関へ行く。

「雪也、茶色の鞄も忘れないで!」

リビングから大声で由美子が叫び伝える。

「これ?」

正方形の茶色い鞄を見つめる。

そして、何が入っているのか中を開けてみる。

すると。

ワンワンワン。

エミューの好きなオモチャや食べ物も入っているので、リビングから小走りで玄関に居る雪也の横にくる。

「エミュー。美味しい匂いがしたのか?おい!ダメだ!ちょっ!」

鞄の中に顔を入れようとする。

自分の着替えも入っているので阻止する雪也。

「今日は洋子叔母さん家でお泊りだ。その時にあげるから待て。コラ!」

クゥ―。

おわずけ?

くれないの?

そんな顔をして鳴く。

「悲しい顔しても無理だ。」

ワォーン。

「ダメ。」

両手をバツにしてエミューに教える。

ワフゥ。

いじけて、ささっと車に乗り込むエミュー。

凹んた姿となる。

「ま、諦めて車に乗ってくれたからいいか。」

そういいながら雪也は、茶色い鞄を右手で持ち、背中にはランドセルをしょって車に乗り込む。

「お待たせ。」

「雪也、エミュー待たせたな。」

二人が慌てながら乗り込み。

俊也がエンジンをかけ車を走らせる。

楽しい家族での会話が、社内の中で響き渡る。

エミューも仲間に入れてー。

そんな様子を見ながら、僕も聴いてるよ?

その代わりでリズミカルに吠えていた。

いつも学生達で渋滞になる信号場所、今日はスイスイと進んで行った。

途中見覚えのある車を発見。

「あれ?」

「俊也、どうしたの?」

バックミラーで確認する俊也。

「後ろの車さ、多分、きっと直樹達の車だ。」

学校の正門に、二台の車がウインカー出し横づけする。

それぞれの車から彩芽と雪也は降りる。

「おはよう雪也兄ちゃん。」

「彩芽おはよう。今日は一番のお気に入りを着てるのか。」

「どう?」

「うん。可愛い。俺が選んだからな。」

少し自慢気に言う雪也。

車の中から二人の両親が出てきた。

「彩芽、可愛いって言われて良かったね。」

綾乃は、綾乃に耳打ちで伝え。

彩芽は、とても嬉しそうに。

「また言ってもらえた。キュンする。」

両手をグーにして下に押しながらジャンプして表現していた。

「はいはい。雪也くんが本当に大好きなのね。」

綾乃は将来、彩芽が雪也と結婚をしてもらいたいなと思うほどの気持ちだった。

「あんまり喋らないコイツがさ、彩芽ちゃんと、親友の智樹くんしか笑顔じゃないからな。」

「本当にねぇ、」

息子の顔を見て思う由美子。

「時間よ。後でエミューと合流よ。」

「エミューまた後で。」

ワンワン。

またね、そう言うように吠えた。

「二人共、頑張ってな。」

「パパ達も、早めに帰れるようにする。勉強はしっかりする事。」

俊也と直樹は、口々に彩芽と雪也に伝えた。

「いってきます!」

二人は、正門から学校の校舎の方に仲良く歩いて行った。

子供達の登校姿を、それぞれの両親は愛しく見届け。

二台の車は、長い長い山道をガタンゴトンと揺れながら通り、山の上の研究所に向かって走って行った。

研究所には、研究の種類によって研究員が4つ施設に分かれている。

彩芽の両親と雪也の両親は、第二研究施設で動物の難病を専門にしている。

毎日毎日。

ここに運ばれてくる動物達の健康状態を見ている。

動物の種類も様々。

新人の時には、泣きながら仕事していた時も多かった。

今は慣れてしまい、号泣するのも仕事と割り切って少なくなった。



































































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