その声の優しさに包まれたい1
午後11時頃の第二研究室。
エミューは、クマの音が鳴るオモチャをコロコロと床で転がしたり、ピーピー鳴らしながらながら遊んでいた。
今日は、大好きなオヤツも持参なので機嫌がいい。
周囲はPCのカタカタ打つ音や、治療中の動物の鳴き声が響いていた。
「直樹。今夜はエミューと子供たちを、洋子の家に預けて徹夜仕事なんだろ?」
「そうだな。」
治療中の動物に、ニコニコしながら語りかけ動物と触れ合っている直樹。
「例の黄色いファイルの確認忘れるなよ。毎回直前で助けてーって言うんだからさ。」
俊也がPCを触りながら、直樹に仕事が出来ているのか?と問いかける。
「ちょっと待ってくれ。」
触っていた小動物をケージに入れる。
デスクにある水色の重要ファイルを見る。
「あれ?ん?黄色のファイルが・・・。」
なっ?
この黄色のファイルにはコピーすらないな。
おかしいな?
確か・・・これなはず・・・。
大きめの黄色のファイルにコピーした資料があったはず・・・。
何故ないのか?
直樹は、頭の中でクエッションマークがつく。
記憶間違いではないはず。
黄色のファイルは二冊ある。
もう一つのものか?
PCにはコピーより、詳しく書いてはあるが、発表の為に抜粋したものが何故ないのか?
不思議に思う。
2日前に、綾乃と確認したはず。
「こっちも?」
細胞検体の注意事項の資料までもない。
その検体は地下にあるけど・・・。
「ふぅ。うぅ。またかな。」
顎に手を当てて考える。
「直樹?どうしたの?」
綾乃が、考えてそうな直樹に声を掛ける。
「いやぁ・・・その・・・。あのさ。」
言いにくそうに、3人の顔を見つめつつ。
「直樹?」
「なんだよ。言えよ。」
「何?」
3人はそれぞれ、何か言いたげな直樹を見つめる。
直樹は困り顔をしながら、怒られるのは当たり前だが声に出してみた。
「ごめん。おかしい事だけど、当日の資料と細胞検体の注意事項の資料までもない。PCの資料しかない。もう一つの、マル秘の黄色いファイルがない。」
えぇぇぇぇ!
3人はそろって叫んでしまう。
「何で?おかしいじゃない!あれほど確認したよね?」
綾乃が直樹に、どういう事だと詰め寄り怒り出す。
「綾乃と、確認してた事を覚えている俺。どこに返却してるのは知らない。」
自分も覚えがあると、背中をのけぞりながら綾乃に話す俊也。
「あなたに黄色のファイルは、二重に鍵を閉めれる場所に入れると・・・・。ここにあるのは二冊のうちの一つよね?もう一つはどこ?地下にあるんじゃないの?どうしてそんなに忘れてしまうの?」
さらに怒りまくる綾乃。
「あちゃー。知らねぇ。」
「クスクス・・・またなのね。もう地下のPCから原文をコピーするしかないわ。そこに、もう一つの黄色いファイルがあればいいけど・・・。」
俊也と由美子は苦笑いしながら、言い合いしてる直樹と綾乃に言う。
「他は大丈夫?確かめて。」
由美子が、直樹に他の紛失がないか?
ちゃんと確かめた方がいいと言う。
「他・・・。あぁ。検体・・・とか?」
由美子に聞く。
「そう。」
両腕を組みコクっと頷く。
「一応。俺と由美子が、地下B2にある検体の保管庫を見てくる。」
念には念をと、検体の保存庫を俊也と由美子が見てくると伝えた。
そして二人は、保存庫の鍵を持ち第二研究室を出て行った。
直樹は、俊也達二人が出て行った後。
綾乃にきつく睨まれる。
「あっ・・・その・・・。」
「全く、子供のように忘れましたー。その性格。父親から、彩芽に受け継がなきゃよいけど・・・。」
そう言って綾乃は、怒り顔のままドスンと椅子に座り、くるんと椅子をデスクに向けた。
PCを打つ音が大きい。
「本当にすまない。」
「・・・・。」
聞こえているが無視をする綾乃。
何度もあり過ぎて、直樹も治しようもない性格に嫌な気分になりつつも。
自分の椅子に座り、綾乃の背中に向かって、一応悪いと心から謝罪する。
返答は、もちろん無言。
綾乃は怒ると、無言になり聞こえないふりをする。
とにかく、俊也と由美子が見つけてくれるといいなぁ。
そんな気持ちの直樹と綾乃。
その頃、危険部取扱室に向かう中の俊也と由美子。
階段を降りながら。
「直樹さ、肝心な事や物の事は、特に忘れっぽいよな。」
俊也が由美子に問いかけた。
「全くこんな時に・・・。毎度、この忘れっぽい障害に関して、私達、小学生から色々見てきているけど、すっごく怒れてきちゃう。」
過去を思い出して、怒りの声になる由美子。
その姿を見て。
俊也は、少しだけ由美子をなだめる様に。
「おいおい。怒りは綾乃だけにしてくれ。」
「だって!明後日に発表なのよ!」
えっ?
俺、何もしてないぞって思いながら。
「俺に言う?」
「あなたに言ってないの!」
とばっちり。
っと、心で思いながらも俊也は。
「まぁさ、長い事、小さい頃から仲良く付き合いしていると慣れるさ。今頃綾乃は、無視無視攻撃しているだろう。いくら忘れていても、研究発表のは別。顔が浮かぶ・・・とても。」
「確かに、眼が吊り上がって下がらないかも。私、もう立派な大人なんだから勘弁してと思うの!」
「はいはい。」
苦笑いな俊也。
廊下で歩きながら直樹の至らない部分を、ブツブツと危険物取扱室に着くまで二人は話していた。
その頃彩芽と雪也は学校が終わり。
その迎えは洋子。
洋子は門の前で待っていた。
二人は洋子の前にきて。
「こんにちわ。」
「洋子叔母さんこんにちわ。」
それぞれ挨拶した。
「はい。上手にできました。」
実は、洋子は大学病院の外科医であり俊也の双子の姉である。
洋子は動物は好き。
俊也みたいに獣医専門の研究者にはならなかった。
それぞれ別の道でも、大学は同じで直樹達とも仲良し。
洋子の車に乗り込む二人。
今からお泊りの為に、エミューを研究所まで迎えに行く。
その途中のファミリーレスランへより、三人で相談し早めの夕食を食べる事にした。
洋子も家で遅く食べるよりも都合がいいと思った。
「彩芽はこれがいい。」
彩芽は300グラムのステーキを指さした。
しかも1980円。
「そっ、そっち?お腹大丈夫?」
「彩芽は食べれる。」
「了解。」
最近、お子様ランチを卒業したばかり。
大人の食べ物が食べたくなる小学一年生。
「俺は、このミックスフライとビスクのスープセットのご飯付き。お腹空いたら、徒歩三分のコンビニでカップラーメンでも買う。」
雪也も二千円代のを頼む。
ビスクは、780円もする。
「わかった。私も久しぶりに豪華飯でいこう。」
三人で5500円と支払いはなるらしい。
それでも食べてくれることが一番だ。
モグモグとお腹一杯、最近の近況などを聞きながら食べていた。
「さて、そろそろ。ごちそう様もしたし迎えにいこう。」
「エミューに会いたい。」
「もう19時か。好きなテレビが観たいから行こう。」
洋子は、彩芽の手を引きながら会計場所まで行き。
黒の折り畳み財布から一万円札を出す。
「一万円からで宜しいですか?」
レストランの男性店員が言った。
「はい。」
っと答える洋子。
先に雪也は、車のキーを借りて一人で乗り込んでいた。
「叔母さんエンジンかけて。」
「待って雪也。」
洋子は支払いを終え、財布にお釣りを入れる。
レストランの入り口は、三段の階段になっていた。
洋子は怪我をするといけないので、彩芽に階段があるからと、入る時と同じ嫌がる彩芽をよそに抱っこして降りた。
そして、車に乗り込んでレストランを後にした。
その車の中で、まだまだ色々話をしていた。
「雪也も顔もカッコよくなって、背も155センチまで伸びたし、中学に行ったら追い越されそう。勉強も頑張っているんだって?あの名門の試験を受けるって聞いたわ。」
「うん。まぁね。」
「私も行けるの?」
「んー。すっごく難しい場所なんだけど、いっぱいいっぱいお勉強して運動したりしないといけない。それから・・・人に優しい生活する事が条件かな。」
「それ面接でない。」
「でも必要じゃない。将来の為には必要。誰でも助け合いだから・・・。」
「はいはい。洋子叔母さんの言う通り。」
嫌々返事する雪也。
「それよりも、ビックリよ。彩芽ちゃんが一年生になってから、見るたびに、顔も綾乃さんに似て、可愛い系で素敵。」
「ありがとう洋子叔母さん。」
話は尽きないが、洋子の車に乗って、お泊りの為にエミューを迎えに行く。
「ねぇ、エミューは私と一緒に眠ってくれるかな?雪也兄ちゃん。」
「大丈夫。一緒に眠ってくれるさ。」
少し微笑み。
「良かった。」
安堵する彩芽。
そんな話をしていたら研究室に着いた。
「雪也、私がエミューを迎えに行くから彩芽ちゃんを頼むわね。ここにiPodあるからユーサイトでも観てて。携帯は電源切らないで持ってなさい。」
「ここで観てる。」
「私ね、アニメが観たい。」
「そうか、じゃ、これMIXだから楽しいぞ。」
「うん。」
「じゃ、宜しく!」
ハイヒールの音を立てながら、研究室の中に駆け足で入って行く洋子。
ハァハァハァハァ。
階段を上がるのは良いが、足に鉛が付いてるみたいで重い。
えーっと。
こっちなはず。
トントン。
「はい。」
綾乃が返事する。
「こんばんわ。」
洋子は、元気な声を出し笑顔で研究室の部屋に入る。
ワンワン!
「エミューお待たせ!」
待ってたよー。
くるくるくるくる。
ブンブンブンブン。
「洋子、いつも感謝します。」
「毎回助かってる。甘えて。感謝だ。」
何故か、いつもしないのに一礼する二人。
「何よ、今までそんな言葉言わないのに・・・。今日は素直。変な物でも食べたの?二人共。」
二人とは、綾乃と直樹の事。
「食べてないわ。本心。なんか言いたくなったの。彩芽は、家と違うことが出来るみたいで嬉しいみたい。毎回大荷物でゴメン。ほら、雪也くんもいるでしょ?まだかなぁって指折りしてた。」
「俺もなんとなくさ。洋子叔母さんの家には、PSPがあるから雪也くんと楽しいとか言ってた。お前のお手製のケーキが食べたいらしい。」
エミューは、三人の輪の中でお座りし話を聞いていた。
「これ全部エミューの?」
床に置いてある茶色い鞄を持った。
クゥクゥクゥ。
「エミューお利口さんにしてるんだぞ。」
ワン!
直樹は、洋子にオレンジ色のリードを左手に渡す。
「じゃ、エミューを連れて行くわ。徹夜頑張って!」
片手にエミューを引き、もう一方の右手には鞄を持っていた。
「エミュー、早く行こう。彩芽ちゃんと雪也が車で待ってるよ。」
後ろを何故か、何度も振り向きながら歩いて行ったエミュー。
やっとの思いで、研究所から出てくるエミューと洋子。
クゥ・・・ガフッ。
「何?言いたげね。」
何故後ろを振り向くのだろう?
「今日はね、私の家でエミューも眠るの!一緒にも帰れないよ。」
ヒィン。
切ない声を出すエミュー。
車に乗る気配がないので、駐車場をぐるりと回ることにした。
車の中の二人は、アニメの番組を終わらせ、まだ仲良く何かを鑑賞していた。
エミューは、クマの音が鳴るオモチャをコロコロと床で転がしたり、ピーピー鳴らしながらながら遊んでいた。
今日は、大好きなオヤツも持参なので機嫌がいい。
周囲はPCのカタカタ打つ音や、治療中の動物の鳴き声が響いていた。
「直樹。今夜はエミューと子供たちを、洋子の家に預けて徹夜仕事なんだろ?」
「そうだな。」
治療中の動物に、ニコニコしながら語りかけ動物と触れ合っている直樹。
「例の黄色いファイルの確認忘れるなよ。毎回直前で助けてーって言うんだからさ。」
俊也がPCを触りながら、直樹に仕事が出来ているのか?と問いかける。
「ちょっと待ってくれ。」
触っていた小動物をケージに入れる。
デスクにある水色の重要ファイルを見る。
「あれ?ん?黄色のファイルが・・・。」
なっ?
この黄色のファイルにはコピーすらないな。
おかしいな?
確か・・・これなはず・・・。
大きめの黄色のファイルにコピーした資料があったはず・・・。
何故ないのか?
直樹は、頭の中でクエッションマークがつく。
記憶間違いではないはず。
黄色のファイルは二冊ある。
もう一つのものか?
PCにはコピーより、詳しく書いてはあるが、発表の為に抜粋したものが何故ないのか?
不思議に思う。
2日前に、綾乃と確認したはず。
「こっちも?」
細胞検体の注意事項の資料までもない。
その検体は地下にあるけど・・・。
「ふぅ。うぅ。またかな。」
顎に手を当てて考える。
「直樹?どうしたの?」
綾乃が、考えてそうな直樹に声を掛ける。
「いやぁ・・・その・・・。あのさ。」
言いにくそうに、3人の顔を見つめつつ。
「直樹?」
「なんだよ。言えよ。」
「何?」
3人はそれぞれ、何か言いたげな直樹を見つめる。
直樹は困り顔をしながら、怒られるのは当たり前だが声に出してみた。
「ごめん。おかしい事だけど、当日の資料と細胞検体の注意事項の資料までもない。PCの資料しかない。もう一つの、マル秘の黄色いファイルがない。」
えぇぇぇぇ!
3人はそろって叫んでしまう。
「何で?おかしいじゃない!あれほど確認したよね?」
綾乃が直樹に、どういう事だと詰め寄り怒り出す。
「綾乃と、確認してた事を覚えている俺。どこに返却してるのは知らない。」
自分も覚えがあると、背中をのけぞりながら綾乃に話す俊也。
「あなたに黄色のファイルは、二重に鍵を閉めれる場所に入れると・・・・。ここにあるのは二冊のうちの一つよね?もう一つはどこ?地下にあるんじゃないの?どうしてそんなに忘れてしまうの?」
さらに怒りまくる綾乃。
「あちゃー。知らねぇ。」
「クスクス・・・またなのね。もう地下のPCから原文をコピーするしかないわ。そこに、もう一つの黄色いファイルがあればいいけど・・・。」
俊也と由美子は苦笑いしながら、言い合いしてる直樹と綾乃に言う。
「他は大丈夫?確かめて。」
由美子が、直樹に他の紛失がないか?
ちゃんと確かめた方がいいと言う。
「他・・・。あぁ。検体・・・とか?」
由美子に聞く。
「そう。」
両腕を組みコクっと頷く。
「一応。俺と由美子が、地下B2にある検体の保管庫を見てくる。」
念には念をと、検体の保存庫を俊也と由美子が見てくると伝えた。
そして二人は、保存庫の鍵を持ち第二研究室を出て行った。
直樹は、俊也達二人が出て行った後。
綾乃にきつく睨まれる。
「あっ・・・その・・・。」
「全く、子供のように忘れましたー。その性格。父親から、彩芽に受け継がなきゃよいけど・・・。」
そう言って綾乃は、怒り顔のままドスンと椅子に座り、くるんと椅子をデスクに向けた。
PCを打つ音が大きい。
「本当にすまない。」
「・・・・。」
聞こえているが無視をする綾乃。
何度もあり過ぎて、直樹も治しようもない性格に嫌な気分になりつつも。
自分の椅子に座り、綾乃の背中に向かって、一応悪いと心から謝罪する。
返答は、もちろん無言。
綾乃は怒ると、無言になり聞こえないふりをする。
とにかく、俊也と由美子が見つけてくれるといいなぁ。
そんな気持ちの直樹と綾乃。
その頃、危険部取扱室に向かう中の俊也と由美子。
階段を降りながら。
「直樹さ、肝心な事や物の事は、特に忘れっぽいよな。」
俊也が由美子に問いかけた。
「全くこんな時に・・・。毎度、この忘れっぽい障害に関して、私達、小学生から色々見てきているけど、すっごく怒れてきちゃう。」
過去を思い出して、怒りの声になる由美子。
その姿を見て。
俊也は、少しだけ由美子をなだめる様に。
「おいおい。怒りは綾乃だけにしてくれ。」
「だって!明後日に発表なのよ!」
えっ?
俺、何もしてないぞって思いながら。
「俺に言う?」
「あなたに言ってないの!」
とばっちり。
っと、心で思いながらも俊也は。
「まぁさ、長い事、小さい頃から仲良く付き合いしていると慣れるさ。今頃綾乃は、無視無視攻撃しているだろう。いくら忘れていても、研究発表のは別。顔が浮かぶ・・・とても。」
「確かに、眼が吊り上がって下がらないかも。私、もう立派な大人なんだから勘弁してと思うの!」
「はいはい。」
苦笑いな俊也。
廊下で歩きながら直樹の至らない部分を、ブツブツと危険物取扱室に着くまで二人は話していた。
その頃彩芽と雪也は学校が終わり。
その迎えは洋子。
洋子は門の前で待っていた。
二人は洋子の前にきて。
「こんにちわ。」
「洋子叔母さんこんにちわ。」
それぞれ挨拶した。
「はい。上手にできました。」
実は、洋子は大学病院の外科医であり俊也の双子の姉である。
洋子は動物は好き。
俊也みたいに獣医専門の研究者にはならなかった。
それぞれ別の道でも、大学は同じで直樹達とも仲良し。
洋子の車に乗り込む二人。
今からお泊りの為に、エミューを研究所まで迎えに行く。
その途中のファミリーレスランへより、三人で相談し早めの夕食を食べる事にした。
洋子も家で遅く食べるよりも都合がいいと思った。
「彩芽はこれがいい。」
彩芽は300グラムのステーキを指さした。
しかも1980円。
「そっ、そっち?お腹大丈夫?」
「彩芽は食べれる。」
「了解。」
最近、お子様ランチを卒業したばかり。
大人の食べ物が食べたくなる小学一年生。
「俺は、このミックスフライとビスクのスープセットのご飯付き。お腹空いたら、徒歩三分のコンビニでカップラーメンでも買う。」
雪也も二千円代のを頼む。
ビスクは、780円もする。
「わかった。私も久しぶりに豪華飯でいこう。」
三人で5500円と支払いはなるらしい。
それでも食べてくれることが一番だ。
モグモグとお腹一杯、最近の近況などを聞きながら食べていた。
「さて、そろそろ。ごちそう様もしたし迎えにいこう。」
「エミューに会いたい。」
「もう19時か。好きなテレビが観たいから行こう。」
洋子は、彩芽の手を引きながら会計場所まで行き。
黒の折り畳み財布から一万円札を出す。
「一万円からで宜しいですか?」
レストランの男性店員が言った。
「はい。」
っと答える洋子。
先に雪也は、車のキーを借りて一人で乗り込んでいた。
「叔母さんエンジンかけて。」
「待って雪也。」
洋子は支払いを終え、財布にお釣りを入れる。
レストランの入り口は、三段の階段になっていた。
洋子は怪我をするといけないので、彩芽に階段があるからと、入る時と同じ嫌がる彩芽をよそに抱っこして降りた。
そして、車に乗り込んでレストランを後にした。
その車の中で、まだまだ色々話をしていた。
「雪也も顔もカッコよくなって、背も155センチまで伸びたし、中学に行ったら追い越されそう。勉強も頑張っているんだって?あの名門の試験を受けるって聞いたわ。」
「うん。まぁね。」
「私も行けるの?」
「んー。すっごく難しい場所なんだけど、いっぱいいっぱいお勉強して運動したりしないといけない。それから・・・人に優しい生活する事が条件かな。」
「それ面接でない。」
「でも必要じゃない。将来の為には必要。誰でも助け合いだから・・・。」
「はいはい。洋子叔母さんの言う通り。」
嫌々返事する雪也。
「それよりも、ビックリよ。彩芽ちゃんが一年生になってから、見るたびに、顔も綾乃さんに似て、可愛い系で素敵。」
「ありがとう洋子叔母さん。」
話は尽きないが、洋子の車に乗って、お泊りの為にエミューを迎えに行く。
「ねぇ、エミューは私と一緒に眠ってくれるかな?雪也兄ちゃん。」
「大丈夫。一緒に眠ってくれるさ。」
少し微笑み。
「良かった。」
安堵する彩芽。
そんな話をしていたら研究室に着いた。
「雪也、私がエミューを迎えに行くから彩芽ちゃんを頼むわね。ここにiPodあるからユーサイトでも観てて。携帯は電源切らないで持ってなさい。」
「ここで観てる。」
「私ね、アニメが観たい。」
「そうか、じゃ、これMIXだから楽しいぞ。」
「うん。」
「じゃ、宜しく!」
ハイヒールの音を立てながら、研究室の中に駆け足で入って行く洋子。
ハァハァハァハァ。
階段を上がるのは良いが、足に鉛が付いてるみたいで重い。
えーっと。
こっちなはず。
トントン。
「はい。」
綾乃が返事する。
「こんばんわ。」
洋子は、元気な声を出し笑顔で研究室の部屋に入る。
ワンワン!
「エミューお待たせ!」
待ってたよー。
くるくるくるくる。
ブンブンブンブン。
「洋子、いつも感謝します。」
「毎回助かってる。甘えて。感謝だ。」
何故か、いつもしないのに一礼する二人。
「何よ、今までそんな言葉言わないのに・・・。今日は素直。変な物でも食べたの?二人共。」
二人とは、綾乃と直樹の事。
「食べてないわ。本心。なんか言いたくなったの。彩芽は、家と違うことが出来るみたいで嬉しいみたい。毎回大荷物でゴメン。ほら、雪也くんもいるでしょ?まだかなぁって指折りしてた。」
「俺もなんとなくさ。洋子叔母さんの家には、PSPがあるから雪也くんと楽しいとか言ってた。お前のお手製のケーキが食べたいらしい。」
エミューは、三人の輪の中でお座りし話を聞いていた。
「これ全部エミューの?」
床に置いてある茶色い鞄を持った。
クゥクゥクゥ。
「エミューお利口さんにしてるんだぞ。」
ワン!
直樹は、洋子にオレンジ色のリードを左手に渡す。
「じゃ、エミューを連れて行くわ。徹夜頑張って!」
片手にエミューを引き、もう一方の右手には鞄を持っていた。
「エミュー、早く行こう。彩芽ちゃんと雪也が車で待ってるよ。」
後ろを何故か、何度も振り向きながら歩いて行ったエミュー。
やっとの思いで、研究所から出てくるエミューと洋子。
クゥ・・・ガフッ。
「何?言いたげね。」
何故後ろを振り向くのだろう?
「今日はね、私の家でエミューも眠るの!一緒にも帰れないよ。」
ヒィン。
切ない声を出すエミュー。
車に乗る気配がないので、駐車場をぐるりと回ることにした。
車の中の二人は、アニメの番組を終わらせ、まだ仲良く何かを鑑賞していた。