その瞳に映るのは
高校1年
高校に入学して最初の文化祭が無事に終わり校内にいつもの風景が戻った頃、何の前触れもなく席替えが始まった。
「ほら、さっさと移動して〜。」
最後の一人が箱から紙を取り出す時にはクラスの皆があちこちに固まって席の番号が書かれた紙を見ては騒いでいた。
担任の亜希ちゃん先生の声が聞こえていない皆は平然と友達同士で勝手に番号が書かれた紙を交換してる。
既に一年のメイン行事をほとんど終えた時期だから、仲が良い人同士で固まりたいもんね。
「紗夏何番だった?」
机の中に入れていた教科書とペンケースをスクールバッグに詰めて立ち上がった時、美優ちゃんが声をかけてくれた。
「私16だった。美優ちゃんは?」
「私は21……あ、紗夏の斜め前か。じゃあ交換しないでいいや」
教壇
1 7 13 19 25 30
2 8 14 20 26 31
3 9 15 21 27 32
4 10 16 22 28 33
5 11 17 23 29 34
6 12 18 24
ちらりと黒板に貼られた席順表を見た美優ちゃんがすぐに向き直って笑顔を見せた。
「本当?良かった!」
嬉しい!美優ちゃんの近くになれた!
自然と緩む顔をそのままにして、二人で人垣をすり抜ける。
既に主のいない新たな自分の席に着くと机にバッグを置いた。
と同時に、すぐ横に人影が現れた。
「お前21?マジかよ……。」
いつの間にか近くに来てた渡辺くんが美優ちゃんの持つ席番を覗き込んでげんなりと呟いた。
「は?何?まさかあんたが隣りなの?」
眉間に皺を寄せた美優ちゃんが声の主を怪訝そうに見つめた。
泣くフリをしながら22番の紙を摘んでひらひらと美優ちゃんの目の前にかざした渡辺くんが嘆く。
「今日から毎日お前の後頭部を見るなんてどんな苦行だよ。」
「はあ?あんた私の後ろなの?あ!紗夏の隣っ!ちょっと私と交換してよ!」
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