その瞳に映るのは
走り出すといつものペダルの重さでなかったので、思いがけず三島と二人乗りしてたことに今頃気付いた。
母さんに感謝しながら気分良く商店街の端まで走ったところで三島に声をかけられた。
「成瀬くん、ここまでで平気。」
その声を聞いて自転車を止めた。
「店はどこ?店まで送るよ。」
「……すぐそこだから。ありがとう。」
ずっと俯向いたままの三島は自転車から降りて歩きだした。
商店街を抜けた横道だから周りにほとんど人はいないけど、さすがに一人にさせたくなくて俺も自転車を降りて押しながら三島の横を歩いた。
けれどちょっと歩いただけですぐに三島が立ち止まった。
「ごめんね。助けてくれたのに…。」
横に並んでなければ聞こえなかったかもしれないくらいの声。
「……いつもはこんな服着てないのに…
成瀬くんには…こんな格好見られたくなかったから……ごめ…。」
微かに震える肩。
そんな三島を見ていたら右手で自転車を支えたまま、左手を三島の細腰に伸ばした。
腰を軽く引き寄せると簡単に動いた三島の身体。
抱きしめるように引き寄せたら俺の胸に三島の額が軽く当たった。