その瞳に映るのは


両手で自転車のハンドルを握っていたはずが気付くと片手をポケットに入れていた。



手を動かして気付いた感触。



スマホをそのまま握って取り出した。




「あのさ、三島。」



俺が話しかけると三島がピクッと肩が揺れたような気がした。



「また、部活帰りとかに三島のとこ寄ってもいいかな?…三島が作った別のケーキも食べてみたいからさ。」



俺の言葉を聞いた三島は顔を上げて柔らかく微笑んだ。




その笑顔を見た瞬間俺の思考が止まった。





「じゃあ次は私がサービスするね。今日はお父さんがサービスしたから私まだ成瀬くんにお礼してないし。」



かろうじて聞き取れた三島の声でハッと我に返った。

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