その瞳に映るのは
部屋に入ると誠は俺の机を物色し始めた。
俺は紗夏の父親がくれたクッキーをバッグから取り出して、ベッドを背に寄りかかってクッキーを食べ始めた。
それを目ざとく見つけた誠。
「あ、クッキー頂戴。」
「一枚もやらねぇよ。」
紗夏が作ったクッキーはデザートに添える為に作ってるようで、店で売っているわけではない。
紗夏の父親がお礼だと言って特別に分けてくれたクッキーだから誰にもやるつもりはない。
あの頃から紗夏はその為にクッキーを焼いていたのだろうか?
何気に毎回、味が違った気がしたけど。
型で抜いたクッキーでなく多少不揃いな手作り感溢れるクッキーを思わず見つめていた。