その瞳に映るのは


翌日。



いつものように自席で本を読んでいると机をコツンとノックされる。

それが合図で顔を上げると成瀬くんの顔が見える。



「おはよう。」


「おはよう、成瀬くん。」



その一言だけで成瀬くんは自分の席に着く。



渡辺くんと席を替える前は、私が前の席だったから通りすがりに挨拶してくれたけど、私が窓際の席になってからはこうやって毎朝声をかけてくれる。


それが私には凄く嬉しいことだけど、女子と話をしない成瀬くんがわざわざ私に声をかけてくれるのを気付いてる人は少なくないと思う。



これじゃまた成瀬くんと噂を立てられてもおかしくないよね…。



私は単純に嬉しいけど、成瀬くんの負担にはなりたくない。



この挨拶も、修学旅行までと言ったほうがいいよね。



修学旅行が終わればまた席替えがある。



また近くの席になれれば自然に挨拶出来るけど、そうでなければ不自然過ぎるから。

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