その瞳に映るのは



「紗夏平気?何かされた?」



抱きしめられたまま、成瀬くんの声が聞こえた。



「紗夏?」





ダメだった。


成瀬くんに名前を呼ばれた瞬間に泣き出しそうな自分がいた。

それを無意識に押さえているだけで身体が動かなかった。




成瀬くんから離れないといけなかったのに……。



これじゃまた成瀬くんと噂される。
また前みたいに話せなくなる。


もう二度と話せなくなるかもしれない。





それだけが悲しかった。



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