その瞳に映るのは
渡辺と体育館に向かうと「マジかっ!?」と誠の声が聞こえた。
何を騒いでいるのか…と思って体育館に続く廊下を曲がったところで誠を見つけた。
そしてすぐに紗夏に気付いた。
周りを歩くクラスメイトや猪瀬と誠が同じ運動着の中、紗夏だけが制服のままだ。
「誠?」
異変に気付いて声をかけると紗夏は猪瀬の陰に隠れた。
その行動に胸が痛むが、誠の話に猪瀬の言葉が俺の思考を止めた。
紗夏の運動着が…ハサミで?
あまりの激昂に誠を掴みかかりそうになるが踏み止めた手に力が入る。
おかげで手に食い込む爪の痛みで冷静さを取り戻した。
昨日の放課後。
部活で散々聞かれた話。
俺ら四天王と呼ばれるメンツが揃って女の子の後ろを歩いてたから、紗夏の事をしつこく聞かれた。
そんなタイミングだから、四天王と関係あるはずだと思って俺は王子のところへ急いだ。