その瞳に映るのは


だから。


俺は誠の言った言葉を必死に思い出した。



逃がすな。
紗夏が自分で動かない限り逃げる。
後悔した木下が俺に会って話したのは紗夏が俺を好きだと知ってる故の助言。




木下も紗夏が俺を好きだと思ってた?



本当に?



それが本当なら……。

でも、紗夏が自分で動かないとダメなんだろ?

だから逃がすなってこと?



………わかんねぇよっ。



紗夏が自分で動く……。




と、自転車のハンドルにうつ伏せて考えてた俺は視界を遮ってたせいで両足を地面につけていたにも関わらずバランスを崩しかけた。

慌てて顔を上げて踏みとどまったが、その時に何か思い出しかけた。

無意識にペダルに足をかけたら思い出したのはペダルの重さ。




あ。紗夏と二人乗りしたんだった。



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