その瞳に映るのは
「おはよう宮野くん。激ヤバって何が?」
「それ」
「そんな事より修学旅行の班!もうほぼ確定だねっ!あ!猪ちゃんっ!こっち。」
興奮してる美優ちゃんは私に抱きついてるまま大きめの声で同じクラスになった猪瀬さんを手招きした。
美優ちゃんと同じバスケ部の猪瀬さん。
今まで直接会話したことは無いけど、よく教室に美優ちゃんを呼びに来ていたから顔は知っていた。
美優ちゃんより背が高くて細くて女子から人気がある猪瀬さん。
綺麗、というより格好いい宝塚の男役トップスター的存在で女子が惚れる女子だ。
いつもストレートの長い髪をシンプルに束ねただけの髪形も、目や唇のパーツは女の子らしいのにすっきりとした顔が中性的に見せていた。
「美優の声デカすぎ。クラスの皆んなびっくりしてるよ。」
美優ちゃんに呼ばれた猪瀬さんが呆れながら近寄ってきた。
その歩く姿はまさにトップスター!
思わず魅入っていたら猪瀬さんと目が合って微笑まれた。
「三島さん今日からよろしくね。」
そう声をかけられて美優ちゃんに抱きつかれてる私の頭を撫でた。
「……話しに聞いてた以上だね。」
「でしょー!紗夏は希少なのよっ。」
頭を撫でながら私と視線を合わせていた猪瀬さんの呟きの意味がわからなかった。
希少?美優ちゃん、私は珍獣扱い?
猪瀬さんは私を見下ろしたまま、私の顔にかかった髪を直してくれた。