その瞳に映るのは


声をかけられてつい返事しちゃったけど、今考えるとかなり複雑だったりする。


美優ちゃんと渡辺くんは同じバスケ部で同中出身の腐れ縁。

見知った間柄だから気にも止めないのだろうけど、渡辺くんは背が高くて気さくな性格が女子に人気の男子。

私みたいな目立たない子にもちゃんと目を合わせて話してくれるから人気があるのも頷けるが、どう見ても隣りの席に私が座っていいような人ではない。


返事しちゃったけど、私が誰かと交換したほうがいいかな?

なんて考えた時には声をかけられていた。



「ねぇねぇ、三島さんは何番?」


早速、渡辺くん狙いの田代さんに目をつけられた。


「あ、私…」
「紗夏はもう交換しないから聞いても無駄だよ。」


私が返事する間もなく、美優ちゃんがはっきりと拒否った。

私は頼まれると断れない性格だと知っているから。



入学式の日、教室の机が名前順に割り振られていたから私は大人しく座っていた。

でも他の人は新しい友達作りに必死で、あちこちで声をかけては自己紹介していた。

その波に乗れなかった私の席の前に座って声をかけてくれたのが美優ちゃんだ。

元気で誰とでも話す美優ちゃんが私なんかに声をかけてくれただけでも嬉しいのに、何故か気に入られて常に一緒に行動するくらい仲良くしてくれてる。


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