その瞳に映るのは


また昨日みたいに一緒帰ろうと誘われて嬉しかった。

けどすぐに昨日の事を思い出した。


私と同じように成瀬くんも思い出したのか、「俺、彼女なんていないから」と言われた。



それで少し焦った。

もしかして、宮野くんが成瀬くんに伝えたのかと思ったから。

宮野くんに今井さんの事を聞いたばかりだったから。



でも、成瀬くんは笑いながら「俺は女嫌いって言われてる」と言った。

私と一緒に歩いてたのを見られただけであの騒ぎだ。
彼女がいたらきっともっと騒がれてる。




確かにそうだ。




じゃあ、やっぱりあの噂の女の子は私。




それが嬉しかった。

でも悲しかった。





また私のせいで成瀬くんに迷惑をかけてる。

またあの時と同じように……。



そう沈みかけた時に聞こえた成瀬くんの声。




「紗夏、行こう。」



私の名前を呼ぶ声に顔を上げたら成瀬くんの優しい表情が見えた。




私のせいで噂されたのに怒ってないの?




そう聞きたかった。

けど、聞くのが怖くてすぐに俯向いてしまった。



俯向いていても身体は勝手に歩き出していた。


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