その瞳に映るのは
猪瀬さんの姿が見えなくなると成瀬くんは机の上に置いたバッグをそのまま放置して、私の後ろの宮野くんの席に座った。
「……猪瀬って何者?」
軽く笑いながら宮野くんの席で手足を投げ出して思い切り伸びをする成瀬くん。
「ごめん成瀬くん。猪瀬さんには何も言ってないんだけど……。」
急な展開に俯向いて小声で成瀬くんに話しかけた。
まだ数人とはいえ、教室にはクラスメイトがいたから。
でも成瀬くんはまるで気にしてないかのように、普通に私に話しかけてきた。
「紗夏が気にすることないよ。俺も帰りに女と歩いてたってやつ、紗夏だってバレたから普通に話しかけるよ。
……紗夏が嫌ならやめるけど。」