その瞳に映るのは
教室の二つ隣の予備室。
渡辺くんが誰もいないのを確認すると中に入ってドアを閉めた。
教室のすぐ近くの予備室だけど、廊下にいた女の子が私達と王子くんのやり取りを見ていた。
「ほらな?渡辺だといえど、付き合ってもいない男と二人きりになんかなるなよ?」
軽く笑いながら私の頭を軽く小突いた。
「…うん。」
思わず項垂れた。
確かに不注意すぎた。
渡辺くんだから安心していたけど、二人きりのところを誰に見られるかわからない。
渡辺くんを好きな女の子はいっぱいいるのだから。
それに、成瀬くんに誤解されたくない。
王子くんに声をかけられた時。
成瀬くん以外の人と私が噂されるかも、と考えた瞬間に思ったのは成瀬くんだった。
中学の時は成瀬くんと噂されたから何も思わなかった。
成瀬くんが好きだったから。
でも、成瀬くん以外の人、と考えた瞬間。
すごく嫌だった。
成瀬くん以外の人と噂されたくない。
噂も何もかも相手は成瀬くんじゃないと嫌だと思った。