その瞳に映るのは



教室の二つ隣の予備室。


渡辺くんが誰もいないのを確認すると中に入ってドアを閉めた。


教室のすぐ近くの予備室だけど、廊下にいた女の子が私達と王子くんのやり取りを見ていた。



「ほらな?渡辺だといえど、付き合ってもいない男と二人きりになんかなるなよ?」


軽く笑いながら私の頭を軽く小突いた。


「…うん。」


思わず項垂れた。




確かに不注意すぎた。

渡辺くんだから安心していたけど、二人きりのところを誰に見られるかわからない。

渡辺くんを好きな女の子はいっぱいいるのだから。





それに、成瀬くんに誤解されたくない。





王子くんに声をかけられた時。

成瀬くん以外の人と私が噂されるかも、と考えた瞬間に思ったのは成瀬くんだった。

中学の時は成瀬くんと噂されたから何も思わなかった。

成瀬くんが好きだったから。



でも、成瀬くん以外の人、と考えた瞬間。


すごく嫌だった。


成瀬くん以外の人と噂されたくない。


噂も何もかも相手は成瀬くんじゃないと嫌だと思った。


< 355 / 370 >

この作品をシェア

pagetop