その瞳に映るのは
じっとサッカー部の練習風景を見ていたら手を引かれた。
気付いた時は視界が遮られていた。
成瀬くんに抱きしめられていた。
「紗夏、渡辺に何を言われたの?」
「……。」
何も言えなかった。
成瀬くんに振られたら渡辺くんと付き合う。
そんなの言えない。
声の代わりに出たのは涙だった。
俯向いたまま勝手に流れた涙を成瀬くんに気付かれたくなくて、成瀬くんから離れようと手を成瀬くんの胸に当てて押す。
でも、それが合図かのように、成瀬くんにきつく抱き締められた。