その瞳に映るのは
中学1年の時。
2学期になって初めて席替えをした。
その時、隣になったのが成瀬くん。
明るくて誰にでも話しかける成瀬くんは隣りの席の私にも普通に話しかけてくれた。
明らかにクラスの中心的存在の成瀬くんは女子にも当然人気があった。
クラスで一番目立つ女の子が熱心に成瀬くんに話しかけていたから、私が成瀬くんに話しかけようと思ったことはなかった。
「あ、三島ら何食ってるの?」
土曜授業でお弁当持参の日。
私が焼いたクッキーを友達の有紀ちゃんにあげて食べてる時に初めて成瀬くんに声をかけられた。
前回、有紀ちゃんがタッパーいっぱいにゼリーを作ってきてくれて一緒に食べた。
そのお礼代わりにその日は私がクッキーを焼いて持ってきた。
「紗夏が焼いたクッキーだよ。」
喜んで食べながら有紀ちゃんは成瀬くんにも「食べる?」とお裾分けした。
「マジで?ラッキー。……美味いじゃん。
三島が作ったの?また持って来てよ。」
「え?あ、うん。……作ったらね。」
社交辞令だと思った。