その瞳に映るのは
でも、席が離れて接点がなくなった私に成瀬くんが話しかけて来るようになった。
なんて事ないくだらない話。
そしてお決まりのように最後には「お菓子作ってきてよ」と言われてた。
何度も言われていたからハロウィンの時期にかぼちゃのクッキーを作った。
『ハロウィンだから。』
そう口実を作って渡したら成瀬くんにまた催促された。
『今度はクリスマスに持ってきてよ。』
多分、この頃には成瀬くんに好意を持っていた。
だから素直にジンジャークッキーを作ってクリスマスに渡した。
その時にお返しと言われて、たまたま持っていた飴を貰った事を覚えてる。
そして年が明けてバレンタインが近くなった頃。
「あ、バレンタインのチョコは絶対持って来てよ」
と催促された。
この時は完全に成瀬くんを好きになっていたけど告白するつもりは無かった。
成瀬くんは私だけにそう言ってたわけではない。
他にも作ってくれそうな女子皆んなに同じ事を言ってたから。
完全な私の片思い。
だから手作りにはしなかった。
ただの義理として用意した市販の安物チョコレートにした。
そしてバレンタイン当日。
クラスの女子が次々と成瀬くんにチョコを渡してた時に便乗して渡した。