その瞳に映るのは
「……三島はこの時間だったのか。
…俺いつもだとこの時間に家出るからさ。
会わないはずだよな。」
話しながら自転車から降りて私の側に自転車を停めた。
私はただその姿を呆然と眺めてた。
自転車を停めると教室へと歩き出す。
そして何かに気付いたように振り返って声をかけた。
「三島?教室行こうぜ。」
成瀬くんが私を呼ぶ声を聞いてハッとした。
さっきまでの自分を呼ばれた気がした。
結局は…。
成瀬くんの顔が見られなくて俯向いた。
「な、成瀬くん先に行って。私…後から行くから。」
やっぱり無理だ。
私は成瀬くんの近くにいられない。
声をかけてくれた。
名前を呼んでくれた。
成瀬くんの笑顔が見られた。
それだけで十分だった。