最近、キレイになった?【奈菜と南雲シリーズ②】
「それにしても、ハチ」
「……なに」
私の「なな」という名前を文字って、いつも彼は私のことを「ハチ」と呼ぶ。いいかげん、いちいち訂正を入れるのも面倒になって、近頃はもう何も言わない。
「何って、おまえ……いつも言ってるだろ?『先に店に入っとけ』って」
「分かってるわよ。時間になったら先に入ってる。でも大抵、南雲その前に来るじゃない」
「ばーか。時間になってなくても先に入っとけって言ってんだよ」
「でも……」
毎回二人で来るこの和食店は料理もお酒もとても美味しいのだけど、一人で入るにはちょっと敷居が高い。大将も奥さんも気さくな方で、行くといつも喜んでくれるのだけれど。
「『でも』じゃない。こんな時間に一人で外に立ってて、何かあったらどうすんだよ」
『こんな時間』って、まだ七時半。
そう言おうかと思ったけれど、私のことを心配してくれているのが分かるから、口を閉じる。
「分かったわよ……」
しぶしぶ頷くと、隣から髪をガシガシとかき回された。
「わっ、ちょっ、なに!」
「良く出来ました。さすがハチ公」
「だからハチ公って、」
「いつも外で待ってるとか、まさにハチ公だろ?それも悪くないけど。でも危ないから次からちゃんとしろよ」
「………うん」
『次』
南雲が当たり前のように発した言葉に、胸がどきんと反応する。
次なんてあるのだろうか。
高鳴ったばかりの胸が、今度はチクンと針が刺したように痛んだ。
「……なに」
私の「なな」という名前を文字って、いつも彼は私のことを「ハチ」と呼ぶ。いいかげん、いちいち訂正を入れるのも面倒になって、近頃はもう何も言わない。
「何って、おまえ……いつも言ってるだろ?『先に店に入っとけ』って」
「分かってるわよ。時間になったら先に入ってる。でも大抵、南雲その前に来るじゃない」
「ばーか。時間になってなくても先に入っとけって言ってんだよ」
「でも……」
毎回二人で来るこの和食店は料理もお酒もとても美味しいのだけど、一人で入るにはちょっと敷居が高い。大将も奥さんも気さくな方で、行くといつも喜んでくれるのだけれど。
「『でも』じゃない。こんな時間に一人で外に立ってて、何かあったらどうすんだよ」
『こんな時間』って、まだ七時半。
そう言おうかと思ったけれど、私のことを心配してくれているのが分かるから、口を閉じる。
「分かったわよ……」
しぶしぶ頷くと、隣から髪をガシガシとかき回された。
「わっ、ちょっ、なに!」
「良く出来ました。さすがハチ公」
「だからハチ公って、」
「いつも外で待ってるとか、まさにハチ公だろ?それも悪くないけど。でも危ないから次からちゃんとしろよ」
「………うん」
『次』
南雲が当たり前のように発した言葉に、胸がどきんと反応する。
次なんてあるのだろうか。
高鳴ったばかりの胸が、今度はチクンと針が刺したように痛んだ。