最近、キレイになった?【奈菜と南雲シリーズ②】
遠慮のない同期の手によってぐしゃぐしゃになった髪を手櫛で直す。後ろで一つに結んでいたシュシュを取り、簡単に結び直した。なんだかんだ、こういう時はまとまりやすいくせ毛は楽だ。

結び直し終わって、飲みかけのビールに手を伸ばしたところで、隣から視線を感じた。
カウンターに腕をつき、手の甲をあご下に当てた南雲が黙ったまま私の方を見ていた。

「な、なに?」

「おまえ、さ……」

南雲がまた黙った。待てども続きの言葉は出てこない。

「もうっ、なんなのよ」

どうせまた、私のことをからかおうと思っているのだ。

(ハチ公の次はなに?うっかり八兵衛?それとも今度は新手のやつ!?)

言いかけた言葉の続きを想像したらちょっとムッとなって、手に持っていたグラスの残りを一気にあおった。


入社式で一緒になって以降三年、配属先がまったく同じこの同期は、私のことをいつもからかってくる。きっと小さくておっちょこちょいの私がジタバタするのを見て面白がって、ストレス発散しているに違いない。
それは、こうして二人きりで食事に行くようになっても変わらなかった。


仕事上がりのご飯。時々入るライン。
そんなの万由子とだって変わらない。

ただの同期?喧嘩仲間?それとも―――

一番最初の時。彼は一緒にご飯を食べることを『デート』と言ったけれど、段々と時間が経つにつれ、からかいの一環だと思えてくる。

やっぱり世の中そんなに自分の都合通りに行かないのだ。


「どうせまた、チンチクリンとか言うんでしょ」

言われる前に言ってやれ。
そう思って言ったくせに、地味にへこんでしまう。

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