あたしを撫でる、君の手が好き。
◇
「るみー、そろそろごはん」
ベッドでうとうとしていると、お母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。
いつの間にか日が暮れていて、部屋が薄暗くなっている。
「はーい、すぐ行くー」
目を擦りながら起き上がったあたしは、まだ制服を着たままだった。
引き出しから適当に選んだパーカーとショートパンツに着替えて部屋を出ようとすると、インターホンが鳴った。
「あら?こんな時間に何かしら。勧誘?」
お母さんがぶつぶつ零しながら、スリッパの音をパタパタと鳴らす。
お母さん、勧誘の人断るの苦手だからなー。長くなるかも。
お母さんが玄関を開ける音を聴きながら、苦笑いする。だけど。
「あら、亜聡くん。ひさしぶり。こんな時間にどうしたの?るみに用事?」
「あー、ちょっと。忘れ物届けたくて」
玄関から聞こえてきた声に、呑気に階段を降りて行こうとしていたあたしの足が止まった。