あたしを撫でる、君の手が好き。
お母さんと話しているのは、勧誘の人なんかではない。聞こえてくるのは、あっくんの声だ。
小学校の低学年くらいまではよくうちに遊びに来ていたあっくんだけど。あたしのことを「シロ」と呼ぶようになってから、あっくんがあたしの家のインターホンを押して遊びに来たことは一度もない。
それなのに、どうしてあっくんが急にうちに!?
「るみなら、すぐ降りてくると思うから。少し待ってて」
「ありがとうございます」
「るみー!亜聡くん来てくれたわよー」
お母さんが玄関から大声で呼んでくる。
来てくれた、って…… どんな顔して降りていけばいいの?
軽くパニックになってしまったあたしは、半分ほど降りかけていた階段をまた駆け上って、部屋のドアを乱暴にバタンと閉じた。
「あら?るみー?」
部屋のドアに背中をつけて、胸に手をあてる。ドキドキとうるさい心臓を落ち着かせようと呼吸を整えていると、階段を上ってくる足音が聞こえてきた。