あたしを撫でる、君の手が好き。


あたしが走って逃げ出したから、不審に思われたんだろう。

しばらくして部屋の前で足音が止まり、ドアが二回ノックされた。


「お母さん、ごめん。あたし、明日までの宿題思い出しちゃったから、お母さんがあっくんに対応して。受け取るものがあるなら、代わりに受け取ってくれといていいから」

早口でそう伝えると、返事の代わりに外側からドアのノブが回される。

まさかお母さんが外からドアを開けようとしてくるとは思わなくて、すごく焦った。


「お母さん!あたしは大丈夫だから」

慌ててドアを押し返そうとするけど、お母さんも外側から強い力で開けようとしてくる。


「お母さん、力強っ……」

対抗しきれないくらいの力に小さくつぶやいたとき、開きかけたドアの隙間からお母さんとは違う茶色の頭が覗き見えた。


「シロ?」

同時に聞こえてきた声に、全身から力が抜ける。その隙を突いて、部屋のドアが外から一気に開けられてしまった。


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