あたしを撫でる、君の手が好き。

「あ、えーっと。あっくん、こんばんは」

「こんばんは、じゃねーよ。明日までの宿題って何?俺、クラス同じなのに、そんなの知らないんだけど」

ははっと愛想笑いを浮かべたあたしを、あっくんがジロリと見下ろしてくる。

笑って誤魔化していると、あっくんが後ろ手に部屋のドアを静かに閉めた。

密室空間にあっくんとふたり。自分の部屋だというのに、その状況に落ち着かない。


「あっくん、下行かない?そろそろ、晩ごはんみたいだし。あ、よかったら、食べて行く?でもあっくんちもおばさんがごはん用意してるかな。だったら、早く帰ったほうが────……」

早口で喋りながら、部屋のドアを開けようとしたら、あっくんに止められた。


「なんでそんな焦ってんの?」

「焦ってないよ」

「じゃぁ、17時に駅に来いってメッセージしたのになんで無視したんだよ。俺が帰れって言ったあと、まっすぐ家に帰った?」

「帰ったよ」

「待っても全然シロ来ないから、そのあと何回か電話かけたんだけど」

「そ、なんだ……?それはちょっと、ウトウトしてたから気付かなかったかも」

「ふーん」

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