あたしを撫でる、君の手が好き。
あたしが17時に駅に行かなかったことがよほど不服なのか、あっくんが納得のいかなそうな顔でジッと見てくる。
たしかに、17時の誘いにはそもそも行く気がなかった。だけど、ウトウトしていてあっくんからの電話に気付かなかったのは本当のことだ。
「あたしだって都合があるし、もう高校生だし。いつまでもあっくんを第一優先になんてできないよ。ほら、下行こうよ」
「じゃぁ、これからのシロの第一優先って何?富谷?」
あっくんを避けて今度こそ部屋のドアを開けようとしたら、耳元で低い声がして、あっくんに肩を押さえられた。
あっという間に、くるりと体が反転して、背中がドアにぺたんと押し付けられる。
顔の横には、ドアについたあっくんの手があって。十数センチほどの近距離で向かい合うあっくんが、あたしに鋭い眼差しを向けていた。