あたしを撫でる、君の手が好き。

なんだこれ。急に噛んできたと思ったら、甘えるみたいに頭をのせてきて。

これじゃ、あっくんのほうがイヌみたいなんだけど。

ワックスで整えられたあっくんの茶色の髪。それにそっと触れてみようとしたとき、あっくんがあたしの肩で小さくため息を吐いた。

あっくんの髪に触れようとしていた手が、そのタイミングを失って中途半端に宙で止まる。


「ほんとに俺のペットだったら、鎖でもつけて、誰にも触らせないのに」

「え?」

あっくん、それはどういう意味────?

まるで独占欲を露わにしたみたいあっくんの言葉に、ドクン、ドクンと心臓が大きな音をたてて暴れ出す。

何をどこから確かめようか迷っていると、スリッパのパタパタと鳴る音が聞こえてきた。


「るみー、ご飯どうする?亜聡くんも食べて行く?」

なかなか部屋から出てこないあたし達を待ちきれなくなったのか、お母さんの声が、階段を上がるスリッパの音とともにあたしの部屋へと近づいてくる。



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