あたしを撫でる、君の手が好き。
「るみー、聞こえてる?ご飯は?亜聡くんはどうするか聞いてみて」
部屋の前でスリッパの音が止まり、お母さんが外から2回ドアをノックする。
あっくんにドアに押し付けられている今の状態で、もしお母さんに外から開けられてしまったら非常にまずい。
「るみー?」
「お母さん、聞こえてる……」
ドギマギしながら返事をすると、あっくんが顔を上げて、あたしの頭を片腕で抱きしめるみたいに引き寄せた。
「ちょ、あっくん、お母さんいる」
小声でそう言ったら、聞こえていないのか、あっくんがあたしの頭をさらにそばへと抱き寄せた。
あっくんがぐっと腕を締めつけるせいで、鼻と口があっくんの肩口に塞がれてうまく声が出せない。
「あ、っく……」
「おばさん、俺、家で食べるから大丈夫です。今、課題でわかんないとこ、教えてて。あと少しで終わるんで」
声を出せないあたしに代わって、あっくんがドアの向こうのお母さんに大ウソを吐く。