あたしを撫でる、君の手が好き。
「俺は、これ以上富谷をシロに近付けたくなかった」
あっくんがもう一度あたしの頭を片腕で抱き寄せて、その手で後ろ髪をゆっくりと撫でる。
耳に届いた、あっくんの少し苦しげな掠れた声と、あたしの髪を絡め取るように上から下に梳いていく指先の動きに、ゾクリと身体が震えた。
桃佳の言葉を借りるなら、まるであっくんが富谷くんに嫉妬してくれているみたいに思えたから。
「あっくん────、あたし……」
もしかしたら。もし今のタイミングで告白すれば、あたしはあっくんの特別な存在になれる可能性があるのかな。
このまま切り出してしまおうか。
思いきって、あっくんの腕のなかで顔を上げる。
そうしたら、あっくんが今まで見たことのないくらいに憂いを帯びた瞳であたしを見つめていて。そのせいで、頭のなかに思い浮かべていた言葉が全部吹っ飛んでしまった。
どこか艶っぽくも見えるあっくんの表情がとても綺麗で、言葉だけでなく、呼吸すらも忘れそうになる。
その顔をぼんやりと見つめ返すと、あっくんがハッとして気まずげに私から目を逸らした。