あたしを撫でる、君の手が好き。
「シロ、今日部活?」
ギクシャクとした動きで足を前に出そうとしていると、あっくんが話しかけてきた。
「うん」
「帰り、前島さんと一緒だよな」
「うん、途中までだけど」
「だったらさ、電車降りたあとに地元の駅前の────……」
「あ、亜聡だ」
あっくんがあたしの頭に手を伸ばしながら何か言いかけたとき、隣の教室から徳永さんが出てきた。
あたしのことなんて視界に入っていないのか、徳永さんがあっくんだけを見て嬉しそうに歩み寄ってくる。
「おー、春菜」
徳永さんに視線を向けたあっくんの手が、あたしの頭には触れずに、何事もなかったみたいに離れて落ちた。
徳永さんの登場で、期待を含んだドキドキ感が一気に萎む。
あっくんと先に話していたのはあたしのはずなのに。あとからやってきた徳永さんは、あたしの存在を無視してあっくんと雑談を始めた。