あたしを撫でる、君の手が好き。


「そういえば、昨日はこれ、ありがとね」

話の途中で、徳永さんがふと思い出したようにカバンを持ち上げる。

小首を傾げて可愛く笑う徳永さんのカバンには、クマのキャラクターのキーホルダーがぶら下がっていた。

それは、クマの右手が上がっているか下がっているかという微妙な違いはあるものの、あたしが昨日あっくんにもらったものとほぼ同じだ。


「あぁ、うん」

昨日って……あっくんは、カラオケのあとに行ったゲーセンで、同じものを徳永さんにも取ってあげてたんだ。

徳永さんのカバンで揺れるキーホルダー。それを見せつけられてしまったあたしの心は複雑だった。

昨日の夕方。あたしの部屋にやってきたあっくんが右手の薬指にキーホルダーの輪を嵌めてくれたときは、自分があっくんの特別な存在になれたみたいで、嬉しくてドキドキしたのに。

昨日のあれは、ただの気まぐれだったのかな。


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