あたしを撫でる、君の手が好き。

徳永さんのカバンで揺れるキーホルダーを見つめているうちに、少しずつ気持ちが落ち込んでいく。


「体育祭のあとに亜聡とは打ち上げできなかったし、昨日は一緒に遊べて楽しかったよ。また部活ないとき、亜聡のこと誘っていい?」

「あー、うん。予定合えば」

「よかった」

落ち込むあたしの気持ちとは裏腹に、あっくんと話す徳永さんの声は、とても楽しげに弾んでいて。ふたりの会話をそばで聞いているあたしの気持ちは、ますます重苦しく沈んでいった。

ほとんど一方的に話す徳永さんと、それにときどき相槌を打つあっくん。そんなふたりの会話は、待っていたところで終わりそうもない。

楽しそうなふたりの空気に耐えきれなくなったあたしは、あっくんのそばを無言ですり抜けると、駆け出した。


「シロ?」

あっくんの呼び止める声が、あたしの胸を苦しくさせる。

徳永さんと話しているあいだずっと、隣で待っているあたしのことなんてほったらかしだったくせに。気まぐれに呼び止めたりしないでほしい。


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