あたしを撫でる、君の手が好き。
「でも、シロちゃんの声震えてるよね?」
あっくんに触れられたときとはまるで違う。富谷くんの遠慮がちな触れ方に、ほんの少しだけ胸が騒いだ。
富谷くんは優しい。通りすがった一瞬で、あたしの些細な気持ちに気付いてくれるくらいに。
桃佳が言うように、あっくんへの期待なんか捨てて、富谷くんの優しさに甘えたほうが楽なのかもしれない。
だけど────
「あのさ、シロちゃん。何かあったなら、俺まだ部活までちょっと時間あるし。話、聞くよ?」
富谷くんの気持ちは嬉しいのに、彼に優しくされればされるほど、胸が苦しくなる。
だって、あたしが本当に触れて欲しいのは────、優しく慰めて欲しいのは、この手じゃない。
「いいよ。話なら、俺が聞くから」
「え、亜聡?」
不意に聞こえてきたあっくんの声に、富谷くんの驚く声が重なる。
頭に触れていた富谷くんの手が離れたかと思うと、あっくんがあたしの首元に腕を回して乱暴に引き寄せた。