あたしを撫でる、君の手が好き。

「いいよ、先にそっち対応して」

「ごめんね、お母さんかな……」

そそくさとスマホを取り出すと、鳴り続けていた着信がプツリと途切れる。

電話をかけてきていたのは、お母さんではなかった。


「電話、富谷くんからだ」

たまにメッセージのやりとりをすることはあっても、富谷くんから電話がかかってくることは珍しい。どうしたんだろう。


『シロちゃん、あのあと大丈夫だった?』

着信の前には、そんなメッセージまで入ってきている。

あのあと、って……、放課後に富谷くんの前で泣きそうになってたあたしを、あっくんが連れて去ってからってことだよね。

あたしはあっくんとの距離が縮まった気がして浮き足立ってたけど、富谷くんは心配してくれていたんだ。

化学準備室であっくんと何をしたか思い起こすと、要らぬ心配をかけたようでなんだか申し訳ない。

富谷くんのメッセージを眺めながらジワジワと頬を熱くさせていると、あっくんがあたしのスマホを横から奪い取ってきた。


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