あたしを撫でる、君の手が好き。


「今度、部活ない日にお祝いしよう。るみの好きなもの奢ってあげる」

桃佳があたしに腕を絡めながら、楽しげに教室の外へと引っ張って行く。

桃佳に引かれて廊下に出ると、富谷くんと一緒にずっと前を歩いていたあっくんが振り向いた。

たまたまなのか、意図的だったのかわからないけど、あたしと目が合った瞬間にあっくんが少し笑う。

その笑顔を見たら胸がキュンとして、一瞬頭を過った心配事なんてどうでもよくなった。

あたしを見てくれるあっくんの眼差しの温度が、これまでとは違う。それは、言葉にしなくたって『確か』だと思う。


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